2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年4月30日

 そして米軍は今後、まさにこの対中国軍の最前線に戻ってくるのだから、その狙うところは、軍事力を背景にして南シナ海の「平和と安定」を破壊しようとする中国の動きを封じ込めること以外の何ものでもないのであろう。

 こうして見れば、鳴り物入りで実現されたオバマ大統領のアジア歴訪の戦略は明々白々なのである。それは要するに、「尖閣防衛」への関与を明確にして最大の同盟国日本との関係強化を図ることによって東シナ海への中国の暴走を封じ込める一方、もう一つの「準同盟国」であるフィリピンに米軍の再駐留を実現させたことで南シナ海への中国の進撃を食い止めようとするものである。それに加えて、「中心位置」にあるマレーシアもこの戦略の一環に関与させることによって、「中国封じ込め網」をより完全なものにしようとするのである。

 そういう意味で、この度のオバマ大統領のアジア歴訪は中国を素通りしていながら、実際には最初から最後まで中国という国の存在を最大の標的にした見事な「中国封じ込め外交」であると言ってよい。実際、今回の歴訪でわざと中国を除外したのも、アジアで中国ともっとも激しく対立している日本とフィリピンを訪問国に選んだのも、まさに「中国封じ込め戦略」から発するところの行動であるにほかならない。

中国への「メッセージ」の真意

 もちろんその一方、オバマ大統領はこの歴訪において、至るところで中国に対する配慮の言葉を発していて、中国政府にまったく別の意味のメッセージを盛んに送っていることも事実である。

 たとえば東京で行った安倍首相との共同記者会見では、オバマ大統領はこう語った。「私たちアメリカは、中国とも強い関係を保っている。中国はこの地域だけでなく、世界にとって非常に重要な国である。明らかなことだが、多くの人口を抱え、経済も成長している。私たちは中国が平和的に台頭することを引き続き、奨励する」。

 そして4月28日にフィリピンで行った記者会見でもオバマ氏は「領土問題は強制や脅しではなく、国際法に基づいて解決されるべきだ」と言って中国を牽制する一方、「我々は国際法に沿う形で中国とパートナーになりたい」「ゴールは封じ込めではない」とも強調した。

 軍事的に中国を封じ込めながらも、中国に対してこのような好意に満ちたメッセージを送っている。一見矛盾して見えるオバマ大統領の真意は一体どこにあるのか。この矛盾こそが、大統領アジア歴訪の狙いと意味をめぐる解説の違いを生じさせた最大の要因でもあるが、一体どう解釈すべきなのか。


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