この背景には、尹錫悦政権時の2023年7月に起こった、海兵隊員の死亡事故がある。集中豪雨の中で行方不明者捜索に出動したチェ上等兵が急流に巻き込まれて亡くなった。
この事件は単なる事故として終わらず、軍の独立性と大統領府からの「外圧疑惑」など政治問題に発展した。今回の細かな配慮は、この事件によるところが大きい。
日本も見習うべき将兵へのオンライン大学教育
ヘッドラインではないが、23日付紙面に「制約なくどこでも学習…軍の最適化教育課程整える」という記事が掲載された。私立のオンライン大学である「ソウルサイバー大学(SCU)」を特集したものだ。
SCUは2000年に韓国で初めて正式認可を受けたオンライン大学で、13学部46学科と大学院を有し、受験から授業、リポート提出、試験までの全ての過程がオンラインで行われる。そして、SCUは将校と下士官の特技教育に力を入れていることでも知られる。
08年に「軍警相談学科」を設立したことを皮切りに、国防技術および国防管理を統合した「防衛産業・国防経営学科」、将来戦に能動的に備える「ドローン・ロボット融合学科」、朝鮮半島の平和と北朝鮮問題を研究する「統一安保北朝鮮学科」を運営し、軍歴を持つ教授陣が現役将兵を教育・進路指導している。
以前、「少子化に苦しむ韓国軍の軍隊で進む少子化対策 衰退する米国造船業の窮状を訴えるトランプ…日本は関税交渉で「造船カード」を使え!」で特定の下士官が大学に通って能力向上を図る技術下士官委託教育を紹介したが、韓国軍では学位やさまざまな資格取得のためのチャンスが提供されている。そこには、多くの国民が「軍隊=学校」という価値観を共有していることがある。そもそもは、(男子の)成長と自立の場、社会性の獲得という意味だったが、時を経るにつれて、学位や資格などの取得を求める声が大きくなり、軍がその声に応えていった。
筆者は、このような韓国の施策を日本も取り入れるべきだと考える。ある大学教員が自衛隊の幹部(将校)は異様な低学歴集団で高卒以下が半数以上というコラムを書いたことがある。筆者はこのコラムに憤慨したが、悲しいかな事実だ。
駐屯地・基地に居住する営内者に手当をつけるより、高卒で入隊する多くの隊員に、働きながらオンライン大学で学ぶ機会を提供する方が魅力化対策になり、組織力の強化にもつながると思うのだが。
