2025年12月21日(日)

MAGA解剖

2025年8月2日

イランへの攻撃を否定?
時期が悪すぎたメッセージ

 彼女は当初、議会証言ではイランの核開発は「差し迫っていない」とする穏健な評価を示していたが、この動画では先述したように「核による絶滅の瀬戸際にある」という彼女個人の強い見解を訴え、政権の外交・安全保障の一貫したメッセージとは異なると非難された。

 彼女の投稿は、イスラエルの強硬派がホワイトハウスでトランプ大統領と面会し、イスラエルによるイラン攻撃を支持するようロビー活動を行った数日後に行われた。トランプ大統領とその側近たちにとって、ギャバードはイスラエルによるイラン攻撃を承認しないよう警告しているように見えたのである。

 トランプの側近の一人は「トランプがトゥルシーという人間を嫌っているとは思わない。だが、あの動画のせいで、トランプは彼女にそれほど興味がなくなったのは確かだ。

 そして、トランプは、閣僚が公式見解から逸れるのを異常に嫌う」と指摘する。さらに、「トランプは、人が自分の考えを訂正しようとしているように見えることを快く思っておらず、多くの人がその動画を政権の立場を訂正しようとしていると受け止めた」と話す。

 ギャバードは、この物議を醸すビデオを投稿して以来、イランとイスラエルの間で進行中の戦争における選択肢についてのトランプ政権の戦略会議から外されている。ギャバードのメッセージがたとえ政権に対してイラン攻撃の考えを変えてほしいという意図が全くなかったとしても、タイミングが悪すぎた。

 彼女は、基本的には軍備拡張には反対で、その姿勢は同盟国に対しても変わらない。かつて、防衛費増額などを決めた日本の安全保障政策に警戒感を示したこともある。

 東アジアの安全保障を鑑み、日本政府は彼女に対して、「抑止力」を高めることの重要性を説きつつ、トランプに広島や長崎を訪れることを促してもらうように主張していくべきである。彼女はトランプ政権の「主流派」ではないかもしれないが、強いパイプを築いておくことは重要だ。

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Wedge 2025年8月号より
終わらなかった戦争 サハリン、日ソ戦争が 戦後の日本に残したこと
終わらなかった戦争 サハリン、日ソ戦争が 戦後の日本に残したこと

1945年8月15日。終戦記念日として知られるこの日に、終わらなかった戦争があった――。樺太(現ロシア・サハリン)での地上戦、日ソ戦争である。
「沖縄が〝唯一〟の地上戦」と言われるが、北海道のさらに北、日本領「南樺太」でも地上戦があったことは広く知られていない。
8月9日以降、ソ連軍は、日ソ中立条約を一方的に破棄し、侵攻。8月15日を経てもなお、戦闘は終わらなかった。この間、多くの人が亡くなり、沖縄戦同様、死の逃避行や集団自決もあった。長らくサハリンに残留を余儀なくされ、ソ連崩壊後にようやく日本に帰ることができた人もいた。
終わらなかった戦争は戦後の日本に何を残したのか。また、現代においても、様々な困難が立ちはだかる日本とロシアの関係はどうなっていくのか。
未来を切り拓くために過去の悲劇を学ぶとともに、歴史の忘却に抗いたい。


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