2025年12月21日(日)

MAGA解剖

2025年8月2日

 民主党を離党した契機になったのは、24年夏、大統領候補がバイデンからカマラ・ハリスにバトンタッチされた際、元副大統領のディック・チェイニーやその娘である共和党のリズ・チェイニーが民主党候補であるハリスを支持したことだった。チェイニー親子がハリスを支持していることを、民主党が好戦派である証拠だと主張した。

ギャバードが直面する
キャリア最大の危機

 ギャバードは22年のロシアによるウクライナ侵攻の際に、米国と北大西洋条約機構(NATO)がロシアの「正当な安全保障上の懸念」を無視したことが戦争の原因であると、まるでロシアの主張を支持するような発言を行ったことで、多くの元外交官や安全保障専門家から、彼女の見解は米国の国家安全保障にとって危険であると批判された。

 しかし、トランプは自身のSNSで「彼女は、その輝かしい経歴を特徴づける恐れを知らない精神を我々の情報機関にもたらしてくれると確信している」と宣言。そして、24年11月、ギャバードを国家情報長官に指名した。彼女の様々な発言に対しては議論を呼んだが、最終的に今年の2月12日、上院で52対48の賛成多数で承認された。

 ギャバードは今、キャリア最大の危機に直面している。6月10日午前5時半、Xに投稿した3分間の動画が原因だ。1945年8月、広島に原爆が投下された直後の街や被爆者の映像を流しながら、原爆のもたらした影響の甚大さを説明している。「長崎も同じような運命をたどった」と解説し、さらに、「政治エリートと戦争屋」が「核保有国間の恐怖と緊張を不用意に煽っている」、そして世界は「核による絶滅の瀬戸際にある」(on the brink of nuclear annihilation)と警告している。

 彼女は実際、ジョージ・グラス駐日大使と共に岩国にある在日米軍基地を訪問し、その足で広島を訪問していた。そのときに被爆の実相に触れ、ショックがあまりにも大きかったのである。超大国である米国の現職閣僚が核兵器への反対を公にするのは極めて異例である。

 トランプ大統領は当然のことながら「彼女は政権の方針と異なる(off message)」として激高したという。ホワイトハウスは彼女の動画のメッセージを非公式かつ〈許可のない〉ものと受け取り、不快感を表明した。


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