2025年12月5日(金)

トランプ2.0

2025年8月8日

予測可能なトランプの行動パターン

 約4カ月前に、この連載の「『トランプ2.0』発足以降、最大のスキャンダル!フーシ派攻撃『機密情報漏洩事件』から国民の目を逸らすトランプ政権の『6つのコミュニケーション作戦』とは?」(4月11日掲載)で指摘したが、トランプは不利益ないし不都合な状態が、危機に連結するとみると、それを乗り越えるために、「『真実』を否定し、問題を最小化せよ」「情報の信頼を下げろ」「『魔女狩り』で括れ」「陰謀論を使え」「決して謝罪するな」および「米国民の目を逸らせ」といったコミュニケーションの作戦をとる。

 今回のエプスタイン事件が、トランプを危機の一歩手前まで追いつめているのは確かで、彼のダメージコントロールの手法をみる好例となっている。

 例えば、米有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、パム・ボンディ司法長官が5月、トランプにエプスタイン文書に彼の名前が複数回掲載されていると報告したと報じた。しかし、トランプは「短い報告であった」と、問題を最小化した。

「トランプ1.0」では、レックス・ティラーソン国務長官(当時、以下同)、H・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、ジョン・ケリー大統領首席補佐官、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、トランプと対立して解任された。しかし、ボンディは彼らのように、トランプに反論して衝突する可能性は極めて低いだろう。

 というのは、「トランプ2.0」は、能力よりもトランプに対する高い忠誠心のあるメンバーで固めた「チーム・オブ・ロイヤル・パーソンズ」であるからだ。

 ちなみに、オバマは、ライバルであったヒラリー・クリントン元上院議員(当時)を閣僚に入れ、異なった物の見方や考え方を重視する「チーム・オブ・ライバルズ」を作った。ホワイトハウスでのある会議で、メンバーから異なった意見が出なかったとき、オバマは彼らに向かって、一旦部屋から出ていき、違った意見があったら戻ってきてくれと告げたと言う。オバマは、自分と異なる意見を述べるメンバーを忠誠心がないとはみなかった。

 話をトランプのコミュニケーション作戦に戻そう。

 トランプは、エプスタイン事件を民主党による自分に対する「魔女狩り」であると述べて、同党を批判した。自分を犠牲者のようにみせかけるトランプの「魔女狩り論」は、彼の常套手段である。

 また、トランプは「ガスライティング(ガス燈)」という相手を心理的にコントロールする手法も用いる。これは、相手が気づいたことに対して、それが現実ではないと否定して、相手を混乱させる危険な心理作戦である。

 トランプは、民主党がエプスタインに関連する文書を管理して、でっち上げたと述べた。同党が、トランプの名前を文書に書き加えたのではないかという疑問を岩盤支持層に抱かせたいのだ。エプスタイン文書に関する彼らの認識を変えようとしている意図がはっきり見える。

 トランプの行動は予測不可能と言われるが、ダメージコントロールが必要とされるような危機が生じた場合は、彼の行動はある程度、予測可能になる。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る