2025年12月5日(金)

MAGA解剖

2025年9月5日

トランプとのかかわり
際立つ相性の良さ

 ラトニックは20年の大統領選では130万ドル寄付したが、24年の大統領選で1260万ドルもの高額をMAGA Inc.に寄付をしている。それが影響したのか、同年8月にはトランプ政権移行チームの共同議長に就任した。トランプの圧勝後、2週間足らずでトランプはラトニックを商務長官に指名し、今年2月18日に上院で51−45の賛成多数で承認された。3日後に就任し、その後キャンター・フィッツジェラルド証券のCEO職を息子に委ねた。

 ラトニックもトランプもビジネス出身であることに加え、両者は米国第一主義の点で100%同調している。2人とも、米国企業の利益を最優先する姿勢を明確にしている。特に外国製品への高関税導入を支持し、貿易は相互的であるべきだと主張している。トランプは以前から、不公平な貿易協定の見直しを主張していたが、その考えとラトニックの考えは足並みをそろえている。

 また、中国に対して経済面で圧力をかけるべきであるというのがラトニックのスタンスであるが、中国のAI企業DeepSeekに対しても輸出管理強化や制裁的関税を支持している。「reshoring(国内生産回帰)」を重視し、トランプのBuy American方針でも一致している。2人の相性もすこぶる良いと思われている。

 暗号資産・ブロックチェーン産業の育成にも積極的である。トランプも、「ビットコインや他の暗号資産は〝詐欺〟だ」と数年前は発言していたが、現在は政策・ビジネス両面で積極的な支持者・推進者へと大きく転換している。

 今年1月には「TRUMP」ミームコインをローンチ、5月には保持者向けのディナーを開催し、トランプファミリー主導の「World Liberty Financial」経由でステーブルコイン「USD1」も発行しているほどだ。

 トランプはラトニックについて「信頼できるのは彼のロイヤルティだ」とその忠誠心を認めている。トランプとラトニックは「すこぶる似ている」と言われているが、政治スタイルは明らかに違いがみられる。

 トランプが直感的で感情的であることに対し、ラトニックは冷静で論理的である。トランプはSNSで後先考えずに発言するが、ラトニックはかなり抑制的である。氏は長年ウォール街にいた経験から、数字とリスク管理に強い。必然的に政策形成もデータに基づく。また、先述したように若いときに両親を亡くし、さらに9.11で従業員の3分の2と弟を亡くし、深い喪失を味わっている。積極的に遺族支援を行い、社会的責任感が非常に強い。それはトランプには欠如している点だろう。


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