中国に対しては強硬派であることはトランプと同じだが、ラトニックはデカップリングではなく、あくまでも制御された「選択的分離」を支持している。例えば、AI、半導体、通信分野では対中輸出規制、関税強化に積極的であるが、農産物や一部の消費財については一定の関与を支持している。
ラトニックが管轄する商務省は、中国向けの最先端技術に対する輸出を管理する機関であるが、特にAIでは、中国への供給網遮断を推進している。
妥協は期待できない
日本に対するスタンス
4月に始まった日米関税交渉は、一時先が見えないと言われていた。ところが7月22日、急遽、トランプ大統領が、日本に対して25%を課すとしていた「相互関税」を15%に引き下げることで合意したと、自身のSNSを使って発表した。
さらに「恐らく史上最大の取引だ」と投稿した。トランプはこの日、訪米中の赤澤亮正経済再生相とホワイトハウスで会談したが、そこに居合わせたのは、他に財務長官のスコット・ベッセントとハワード・ラトニックであった。
加えて日本は米国に対して5500億ドル(約80兆円)の投資を行うとし、その投資ファンドを提唱してそのことを取引の中心的な柱として設計したのがまさにハワード・ラトニックであった。
しかし、これで交渉は終わったわけではない。鉄鋼・アルミへの関税は50%のままであるので、日米間の関税交渉はこれからも続くことを忘れてはならない。
