2025年12月5日(金)

日本の医療は誰のものか

2025年9月1日

行政のイニシアチブと
関係者の協力が不可欠

 広島県は、県内唯一の大学病院を持つ広島大学とも連携協定を締結し、地域の医療関係者にも協力を仰いでいる。

 「医師、看護師、歯科医師、薬剤師など、職種を超えた医療関係者が集う地域保健対策協議会(地対協)と県とで、都市圏における医療提供体制のあるべき姿について議論を重ねてきた。地対協を中心として良好な協力関係が築けているのは大きな強みだ」

 医療機関の統合は単なる施設の統合ではなく、処遇はもちろんのこと、文化や方針の異なる組織同士が一つになるため、現場レベルでは様々な調整が求められる。企業合併同様、4医療機関の統合は決して簡単なことではない。 

 「病院設置者(経営責任主体)が基本理念に賛同してもらえるかが鍵を握る。将来を見据えた医療集約の重要性や、高度な技術を磨きたいと考える意欲のある若手医師を惹きつけるため、魅力ある高度医療施設の必要性を伝えることを大切にした」

 病院統合による医療提供体制の集約は、必要性が認識されていても実行に移すことは容易ではない。その中で、広島県が主体となって推進する本プロジェクトは今後、他の自治体のモデルケースになる可能性を秘めており、関係者からも注目されている。

 「全国的に見られるのは経営的に難しい状態となり、やむを得ず医療機関を統合するケースだ。一方、本プロジェクトは将来的な課題を予測し、先手を打って対策を講じようというもの。成功すれば都市型病院統合の一つのモデルケースになるだろう」

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Wedge 2025年9月号より
日本の医療は誰のものか
日本の医療は誰のものか

日本の医療が崩壊の危機に瀕している。国民皆保険制度により私たちは「いつでも、誰でも、どこでも」安心して医療を受けることができるようになった。一方、全国各地で医師の偏在が起こり、経営状況の悪化から病院の統廃合が進むなど、従来通りの医療提供体制を持続させることが困難な時代になりつつある。日本の医療は誰のものか─。今こそ、真剣に考えたい。


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