日本の医療は質が高い──。そう感じている読者は少なくないはずだが、果たしてそうなのか? データから日本の医療を〝解剖〟する。
Q1 日本の病床数は、世界でもトップレベルに多いと聞きます。
病床数が多いことは好ましいことなのでしょうか。
病床数が多いことは好ましいことなのでしょうか。
A1 2020年時点の人口1000人当たりの病床数(主に急性期医療を提供する病床)は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で日本は最多でした。病床数が多い方が好ましいことと感じるかもしれませんが、そうとも限りません。
なぜなら、「医療の価値」は、医療の「質÷コスト」の方程式で考えることができるからです。医療の質は高ければ高いほど良いことは明らかです。しかし、提供する医療には様々なコストがかかっており、それが過剰になれば、質が高くても医療の価値は低下します。
例えば、病床数が実需(医療に対する実際の需要)よりも過剰な場合、病床余剰による収益の悪化や、後述する在院日数延伸による医療従事者一人ひとりが対応する患者数が多くなることで負担増につながり、離職者の増加や病院経営の持続可能性に悪影響を及ぼす可能性もあります。その意味で、実需に応じた病床数を目指す必要があるのです。

