「何となく体の調子が悪く、耳鳴りがするとともに、お腹の具合もよくない……」
こうした時、耳鼻科に行くべきか、それとも内科なのか、迷った経験はないだろうか。実際、日本総合研究所が2024年12月に実施した400人対象のアンケート調査によれば、「身体の不調を感じた際、何科を受診したらよいかわからなかった」という経験がある人は約5人に1人にのぼりました。この結果からも、少なからず多くの人々が自分の症状に対してどの診療科を受診すべきか悩み、「受診迷子」になった経験があることがうかがえます。
筆者も、少し動いただけで汗が止まらず、ひどく疲れやすいという不調を感じていたことがありました。しかしそれは自分の体質や仕事のストレスによるもの、いわば精神的な不調なのだろうと考え、どの診療科にいけばよいかもわからず、長年放置していました。ところが体調が著しく悪化してから医療機関を受診すると、甲状腺機能亢進症(いわゆるバセドウ病)と診断されたのです。
このように、不調を感じていながら何科に行けばよいか分からず受診と診断が遅れてしまうケースもあるでしょう。ただ、こうしたときに頼れる存在が、残念ながら現状では決して多いとは言えません。
「病気ではなく人を診る」総合診療医
先日放送されたTBS系日曜劇場『19番目のカルテ』第2話では、病を抱える弟と、その弟を支える兄のエピソードが描かれました。劇中で、松本潤さん演じる総合診療医が、弟を支える兄の抱える不調や悩みに耳を傾け、「病気ではなく人を診る」という姿勢を示すシーンがありました。
このシーンを見て、視聴された方の中には、受診している診療科の専門領域が何かを気にせずに、自分の心身の不調や悩みをありのまま伝えられたらと思ったのではないでしょうか。患者にとって、臓器や病名を意識せずとも自分の不調を丸ごと受け止めてくれる存在は心強いものであり、そうした関係性を望む声は少なくないでしょう。
そして、総合診療医とは、診療科の垣根にとらわれず幅広い疾患に対応できるよう研鑽を積んだ医師です。珍しい疾患かそうでないかを見極めるための知識や経験を積み重ね、患者の不調に対してどのような検査・治療アプローチが必要かなどといった判断をしながら診療しています。
