TBS系日曜劇場『19番目のカルテ』の第1話が7月13日に放送され、興味深いワンシーンが描かれました。骨折で入院中の患者が喉の痛みを訴えた際、担当の整形外科医は自分の専門外であるその症状を耳鼻科に任せようとします。しかしそこに、松本潤さん演じる医師・徳重晃が現れ、患者の喉の痛みから重大疾患の兆候を見抜き、緊急オペに繋げました。
専門分野の壁を越えて「病気ではなく、人を診る」この対応ぶりに、「こんなオールラウンドな医者が実際にいたら……」と思った視聴者も多いのではないでしょうか。実は、徳重のように特定の病気に限定せず患者という「人」全体を包括的に診る医師が日本にも存在しております。
総合診療医という専門医で、患者の症状だけでなく生活背景や家族構成まで含めた全体像を把握し、必要に応じて専門医との調整も行う、いわば地域医療の「ジェネラリスト」的存在です。総合診療医そのものは決してドラマだけの存在ではありません。
では、なぜ、私たちの日常生活で出会うことが少ないのでしょうか。解説していきます。
まずは疾患・臓器別での受診が当たり前の日本
欧米などでは総合診療医(家庭医)はごく当たり前に存在します。例えば、アジアでも台湾では1980年代から家庭医の育成を進め、専門資格を取った医師は「家庭医療科」としてクリニックを開業できます。世界の多くの国で一次医療(プライマリ・ケア)を担う医師は幅広い疾患に対応できる家庭医であり、単一の専門に特化しません。
これに対し、日本では、街の診療所の多くが「内科」や「耳鼻咽喉科」「皮膚科」といった疾患・臓器別の専門医による個人開業です。患者の疾患が医師の専門外と診断されれば、他科へ紹介するのが日常です。患者は症状ごとに別の医療機関を受診することが当たり前の光景になっています。
筆者自身、複数の持病を抱える一人です。甲状腺機能亢進症、前立腺肥大、喘息、中程度の睡眠時無呼吸症候群、慢性鼻炎といった具合に軽めとはいえ複数の疾患があり、それぞれ別々の専門科で診てもらっています。3カ月に一度複数の診療所をハシゴし、その都度受付から会計・薬の受け取りまで一つの診療所で最大2時間を費やす生活です。
