『ひとりでしにたい』(NHK、土曜よる10時)は、綾瀬はるかのコメディアンヌの才能が爆発的に笑いを誘う傑作ドラマである。美術館で働く山口鳴海(綾瀬)は独身で39歳。父方の伯母・山口光子(若かりし頃:山口紗弥加、晩年:稲川実代子)が、華々しいキャリアウーマンとして独身暮らしをしていて、鳴海の憧れだった。しかし、定年後に孤独死を遂げる。
伯母の死をきっかけとして、鳴海(綾瀬)は将来の人生を考えるようになるのだった。仕事は楽しく、終の棲家である高層マンションも購入済みである。タレントの「推し活」にも熱を上げている。伯母の光子のような人生を送るのもよいと考えていた矢先のことだった。
綾瀬はるかという女優の魅力
綾瀬はるかという女優は「天然」と呼ばれて、そのエピソードはYouTubeに数々アップされている。代表作を振り返るとき、綾瀬はこれまでの女優像を塗り替えているひとりである。
映画『海街diary』(是枝裕和監督、2015年)では、3人姉妹のしっかりとした看護師の長女役として、父親と母親とは別の女性との間に生まれた中学生の妹を実家に引き取る。しかも、綾瀬の役は医師と不倫をしている。
アクション俳優としての存在もまた、際立っている。ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(直木賞作家・金城一紀原案/脚本、19年)と、その後を描いた映画(佐藤東弥監督、21年)でも、元諜報員にして、彼女を監視する西島秀俊の妻として。映画『リボルバー・リリー』(行定勲監督、23年)における、元諜報員にして旧海軍と旧陸軍が狙う資金をめぐる闘いに血みどろの活躍をみせた。
コメディアンヌとしての最近の活動をみると、大河ドラマ『べらぼう』の語りを務める「九郎助稲荷」の役がときに狐の衣装をまとって現れる。ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS、2018年)では、ライバル会社の末期ガンの営業マンから、死の前に結婚して娘を託された。