「おひとりさま」を全うするためには
那須田は、鳴海に追い打ちをかけるような質問を投げかける。
「孤独死をしないようにする方法を知っていますか?」
「あらかじめ入所する施設を決めておく。あるいは早めに(他人でいいから)共同生活を始める。生存確認をするサービスも確認しておく」と、那須田。
さらには、「ひとりになってもいいように、支援団体を確認しておくこと。地域によっては包括支援センターがあります。生活のカネに困ったら、生活保護もありますよ」
「元気なうちに調べて、早めの終活をすることです。孤立して、希望がなくなるとなにもやる気が起きなくなって、排便や排尿も面倒になって孤独死することもあるんですよ」
鳴海(綾瀬)は初めて、自分の孤独死どころか、その前に立ちはだかる困難な未来に気づくのだった。親の老後はどうするのか。そして、その死後は。
親の「終活」のことを、まずは考えなければならないのではないか。
実家の両親にふたりの「終活」を説得しようとして、鳴海(綾瀬)は那須田(佐野)を一緒に連れていくことにする。
那須田は、好意を寄せる鳴海との距離を縮めようと、公務員風の背広姿から「推し」のアイドル風に髪型から服装まで変えた。そして、鳴海と向き合ってすわりながら、手元のスマホを隠して鳴海の「推し」について語り合ったのだ。
鳴海の父・和夫(國村隼)は、ふたりを恋人同士といったんは勘違いする。
那須田は和夫にいう。「山口(鳴海)さんは、いい子で化石みたいな考えを直そうとしているんです」と、切り出した。「一人暮らしになったらどうするんですか?」と。
「それは、独身だし、鳴海にマンションからうちに戻ってもらって世話してもらうよ」と。
那須田は、はっきりという。「お父さん、鳴海さんに殺されますよ。主婦歴30年以上のおかあさんと同じように娘さんができると思いますか? 介護状態になると、虐待やネグレクトだってあるんですよ」と。和夫は一気に暗い顔になる。
ヒップホップダンスの練習から帰ってきた、母・雅子(松坂慶子)に鳴海が終活のことを説明していると告げると、「そんなこといいのよ」と。鳴海は、母が熟年離婚を考えているのではないか、と疑念が浮かぶ。
テーマはいわゆる「おひとりさま」である。この言葉は、東大名誉教授によって広められたが、自分が実際はそうではなかったことから、すっかり使われなくなったように感じる。