2025年7月10日(木)

田部康喜のTV読本

2025年7月5日

 これほど、幅広い演技ができる女優はほかにいるだろうか。仲代達也は俳優が極めて面白い職業であることについて「さまざまな人生を経験することにある」と、語っている。不惑を迎えてほぼ、同じ年齢をコメディアンヌとして、今回のドラマを生きるのである。

佐野勇斗との漫才のような掛け合い

 終活ギャグマンガ『ひとりでしにたい』(カレー沢薫)を原作とした、大森美香の脚本のテンポはいい。

 東京都庁から出向で美術館に勤務している、独身で20歳代と思われる那須田優弥(佐野勇斗)と鳴海(綾瀬)との掛け合い漫才のような会話の連続が、観る者を一気につかむ。本作は全6話。1話「39才、×婚活 〇終活、はじめました」(6月21日)と、第2話「同担のカレと親の終活!」(28日)。

 伯母の孤独死のショックから、鳴海(綾瀬)は「婚活アプリ」に登録する。反応はない。あったかと思えば、「国際ロマンス詐欺」だった。

 職場に最後まで残った、鳴海に対して那須田(佐野)はいう。

 「あなた(鳴海)に、人生設計という文字はない。よく毎日楽しそうにしていますね」

 「山口(鳴海)さんのスペックで、婚活がうまくいくと思いますか?あなたの年齢なら、50歳以上かあるいは、親の介護のために人手となる人を求める人ぐらいですよ」

 那須田(佐野)自身はというと、人生に意義は求めない、終の棲家となる家があって、食べられて、みすぼらしくない服を着るのが、自分の将来像だ。伯母の孤独死をきっかけにして、婚活に走る鳴海にちょっといじわるを言ったのだった。

 実は、那須田は、年齢が離れてはいるが鳴海に密かに思いを寄せている。皮肉はある種の愛情表現でもあった。そして、それまで話をしたことがなかった鳴海と、「孤独死」ということで言葉をかわすことができるようになったことを喜んでもいる。

 そんな那須田の言葉を聞いて、鳴海は決心する。

 「ひとりでいきて、ひとりでしぬことだ」と。

(出所:NHKホームページより)

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