2025年12月6日(土)

Wedge REPORT

2025年7月17日

このままでは志す医師も減ってしまう

 看板を出せないという規制は、総合診療医が日本で根付かない悪循環にもなっています。患者としては、看板がないことで総合診療医に辿り着きにくくなります。医師としても、せっかく専門医として「総合診療専門医」の資格を取ってもそれを院外に掲げられなければ、集患も難しくなってしまいます。現状では、総合診療医を志す医師や研修医にとって、「将来、総合診療科クリニックを構えて総合診療をやりたい」と思い描くことが難しい状況です。

 さらに政策的にも、国が総合診療専門医を育成推進している一方でその名称を院外の看板で名乗れないというのは一貫性を欠いたメッセージとなりかねません。「本当に国は総合診療を重視しているのか?」という疑念すら招きかねない状況です。

 では、なぜ総合診療科の院外標榜は認められないままなのでしょうか。その背景には歴史的・政治的な文脈があります。

 実は過去に日本医師会など既存の医療団体が「家庭医の導入は医療費抑制や国家管理の手段になる」と懸念し反対した経緯があり、総合診療科を独立した診療科に位置づけることに慎重な空気が長らく続いてきました。2023年4月5日の厚生労働委員会第7号では、標榜に関する意見について、政府参考人より①独立した診療分野を形成していること、②国民の求めの高い診療分野であること、③国民が適切に受診できること、④国民の受診機会が適切に確保できるよう診療分野に関する知識・技術が医師に普及、定着していることといった4つの評価基準が示されました。しかし、その際に、総合診療科はそれらに合致すると判断できないとの見解もあわせて示されました。

 しかし昨今、超高齢社会で多疾患を抱える患者が増えている現実や、地域医療での総合診療の必要性を踏まえ、ようやく政策に動きが出るかもしれません。それは、筆者が23年4月4日の衆議院厚生労働委員会で参考人として「総合診療科の標榜容認」を訴えたことや、24年4月26日の内閣府規制改革推進会議ワーキンググループで同様の提言を行ったこともあり、議論が前進しつつあります。総合診療科の看板解禁に向けた議論が、ようやく正式に動き出したのです。


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