事業承継とは「引き継ぎ」ではなく「志の受け渡し」！経営者は商いへの想いをどう伝えるのか？

　なぜこの取引先を選ぶのか。

　なぜこの商品には妥協しないのか。

　なぜこの客には頭を下げるのか。

　そうした問いに対して、経営者自身が日々の姿勢で答えているかどうか。その積み重ねが、次世代にとっての“生きた教科書”になる。

　さらに必要なのは、その所作に込めた意味を言葉にする勇気だ。

　「わかるやつは見ていればわかる」

　「言わずとも伝わるはずだ」

　そんな幻想はもう捨てなければならない。言葉と行動の両輪で想いを伝える覚悟が、今こそ求められている。なぜなら、事業承継とは「経営の引き継ぎ」ではなく、「志の受け渡し」だからだ。そして、その第一歩は、今日の商いに込めた想いを所作で見せ、言葉で届けることにある。

自らへの問いにも

　跡継ぎと共に営む時間を持ち、目を見て語り、現場で汗をかく――。その積み重ねの中にこそ、未来へ続く“真の商い”が育まれる。

　今日、あなたが次世代に見せる所作は、どんな“商いの言葉”になっているだろうか。伝えるべきは、成功体験やノウハウではない。

　「なぜ、この商いに人生を懸けてきたのか」という問いへの答えである。それを言葉で語り、所作で示し、そして“共に営む時間”に託すことが大切だ。

　まずは、明日の朝、自分がどのように一日を始めるかを見つめ直してみよう。その小さな一歩が、跡継ぎとの心の距離を縮め、未来の商いをつくる礎となる。