「突っ張り棒」。ありふれた家庭用品だが、使い方次第で、リフォームにも匹敵するような大改造ができる──。
そう教えてくれたのは、平安伸銅工業(大阪市西区)の竹内香予子さん(42歳)。竹内さんは新聞記者を経て、2010年に祖父が創業した同社に入社した。

竹内香予子(Kayoko Takeuchi)
平安伸銅工業 代表取締役
1982年兵庫県生まれ。大学卒業後、新聞社で記者を経て、2010年に家業である平安伸銅工業に入社する。「LABRICO」「DRAW A LINE」「AIR SHELF」などのブランドで「突っ張り棒」を再定義している。(写真:生津勝隆以下同)
平安伸銅工業 代表取締役
1982年兵庫県生まれ。大学卒業後、新聞社で記者を経て、2010年に家業である平安伸銅工業に入社する。「LABRICO」「DRAW A LINE」「AIR SHELF」などのブランドで「突っ張り棒」を再定義している。(写真:生津勝隆以下同)
「創業当時は、戦後の住宅難解消に向けてアルミサッシを製造・供給していました。住宅難が解消されたのが1970年代。そのタイミングで父は『家はできたけど、中身が整っていない』ことに気づき、突っ張り棒の製造を始めました。そんな父に対して、私には何ができるのか?
そう考えた時、現代社会は物質的には便利なものに満たされていても、画一的な暮らしの提案になってしまっていて、一人ひとりの最適解がつくりにくい状態になってないかという問いが生まれました」
そこで考えたのが「暮らすがえ」というコンセプト。突っ張り棒を使い、暮らす人のニーズに合わせて、家の中を変えていくというもの。前提となったのが、「後を継ぐこと」を自分なりに「言語化」することだった。
「子どもの頃から家業を継ぐように言われたことはありませんでした。だから事業継承にあたっては、長く働く社員さんに話を聞いたりするなどして〝平安らしさ〟を自分なりに徹底して探しました」
そんなとき、ふと目に入ったのが当時の突っ張り棒のパッケージに書かれていた「暮らしのアイデアと技術」というロゴの言葉だ。
「経営理念でもなく、父から引き継ぐように言われたわけでもありません。でもこの言葉が、私たちの起源なのではないかと思えるようになり、平安伸銅が大切にしてきたことって、こういうことなんだなっていうのが『言語化』できたのです」