「コロナ禍で家の中で過ごすことが多くなり、売り上げが一時持ち直したが、長期的な消費減少傾向は変わらない。個人客が減っている分、法人への販売など他の販売チャンネルを増やして対応している」と現状を話す。
「難しい経営環境の中、後継者のいない花屋の廃業が相次いでいる」とも話す。「街に花屋があり、家庭に花がある」というかつて当たり前だった日本の街の原風景が失われつつあると言える。
花のある暮らしの価値
世界に目を向けると、消費額が高いスイスやオランダでは、街中に花があふれているのを筆者は以前、目の当たりにした。日常的に花を買い、食卓やオフィスに飾る習慣が根付いていると現地の人たちは話していた。
日本では花の利用が母の日など「特別な日」や企業が顧客への「贈答用」と、限られているのが実態だ。
日本の経済が長期低迷し、現在のように食料品など必需品の物価の高騰が続くと、「花は贈答用で、自分で買うことはなく贅沢品である」との意識変化が、花の消費低迷に影響してきたようだ。
しかし、花が持つ役割は単なる消費財にとどまらないはずだ。家庭の玄関やリビングに一輪の花があるだけで、気持ちが和らいだ経験を持つ人も多いと思う。
20年の農研機構の研究によれば、「花の観賞が脳の活動に影響を与え、心理的、生理的に生じたストレス反応を緩和させる」効果があるとされる。
また、公共施設や学校、病院に花や緑があることで、地域の景観や人々の心の豊かさが保たれる。花産業を守ることは、単に農家や小売を支援することではなく、社会の文化的基盤を守ることにもつながる。
