2025年12月5日(金)

教養としての中東情勢

2025年9月24日

日本はいつまでトランプの顔色うかがうのか

 ネタニヤフ首相が「自制なきイスラエル」(米紙)を演出しているのは国連総会へのメッセージでもある。9月23日からの総会では、有力国がパレスチナ国家を承認する見通しだ。すでに先進7カ国(G7)加盟国のうち、英国とカナダが、またオーストラリアも21日に国家承認した。フランスも一両日中に続く見通し。

 首相は「何者もイスラエルの行動を止めることはできない」と強気の姿勢を崩していないが、イスラエルの国際社会での孤立は強まっている。国連人権理事会の調査委員会が「ネタニヤフ氏らがパレスチナ人へのジェノサイドを扇動した」と結論付けたのもイスラエルに対する逆風が吹いていることの証だろう。

 しかし、日本がパレスチナ国家承認を見送ったのはいただけない。日本は「2国家共存」を支持しているが、岩屋毅外相は「イスラエルが態度を硬化させ、ガザの情勢が悪化することを懸念した」などと承認を断念した理由について語った。しかし、6万5000人以上が犠牲になっている最悪の現状で、情勢が基本的にこれ以上悪化する懸念などあるのだろうか。

 さらに言えば、外相は「パレスチナ国家樹立が困難となりかねない状況になった場合」、国家承認やイスラエルへの制裁を検討する必要がある、といった認識を示したが、すでにネタニヤフ首相が「パレスチナ国家など存在しない」と言明している中で、国家樹立が困難になりかねない状況などあるのだろうか。外相の発言はガザの悲惨な現状を無視したものと言えるだろう。

 なぜこうした判断になったのか。それはトランプ氏の顔色を窺った「対米追従」以外のなにものでもない。

 国家承認は象徴的な意味合いでしかないが、米国の特別な同盟国である英国ですら、承認に踏み出した。欧州連合(EU)はイスラエルに制裁することさえ決めている。日本が国家承認する機会を自ら放棄するのは間尺に合わない。

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