湾岸諸国は安全保障を基本的に米国に依存してきたが、イスラエルが米軍基地が存在するカタールを直接ミサイルで攻撃したことに湾岸諸国は驚き、かつ米国のその後のイスラエル寄りの姿勢にショックを受けていると考えて間違いではない。サウジや湾岸諸国は今後、米国の信頼度に一定の疑念を持ち、防衛関係を多様化していく方向に向かうだろう。
中東情勢の屈曲点
米国のトランプ政権は武力を振り回しているイスラエルに自制を求めず、イスラエルのやりたい放題に目を閉じているが、こういう政策は湾岸地域での米国の影響力を漸減させていくことにつながるように思われる。
2020年のアブラハム合意では、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、イスラエルとバーレーンとの間の国交が正常化され、イスラエルとアラブ諸国(とりわけサウジ)との国交正常化や関係改善が広がっていくことが展望された。しかし、アブラハム合意により開かれた展望は、サウジとイスラエルの国交正常化を含め、今や全く見通しが立たない状況にあるように思われる。
今回のサウジ・パキスタンの相互防衛協定は、中東情勢における一つの大きな屈曲点であると評価すべきであろう。

