サウジはイスラエルとの国交正常化につながるグランド・ディールの一環として、米政府の核計画への協力と共に、米国との防衛協定の締結を望んでいた。
しかしこの目論見は、2023年10月7日のハマスのイスラエル攻撃でガザ戦争が始まり、地域に紛争が広がる中、頓挫してしまった。
2年近くにおよぶガザ戦争と極右のネタニヤフ政府のふるまいに対し、サウジは次第に怒りを募らせている。
そして湾岸諸国は安全保障で自分たちが今も米国に依存していることはわかっているが、専門家は、イスラエルによるドーハ攻撃の結果、長期的には湾岸諸国が防衛関係の多様化を求める可能性があると言う。
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落ちる湾岸諸国の米国への信頼
サウジアラビアとパキスタンは9月17日、戦略的相互防衛協定を締結し、両国のいずれかの国に対する攻撃は両国に対する攻撃であるとみなすと規定し、かつそのためには必要なあらゆる防衛・軍事手段が使用されると説明している。
9月9日、イスラエルはカタールに滞在中のハマスの要員をミサイル攻撃で殺害したが、これを含む湾岸地域での安全保障環境の変化に対するサウジ側の対応策であるとみられる。イスラエルは核兵器保有国であるが、サウジは同じく核兵器保有国であるパキスタンによる核の傘も期待しているものと思われる。
サウジとパキスタンの関係は、経済的にはサウジが援助国であり、パキスタンは援助の受け取り側であるという関係にあり、パキスタンはサウジの意向を尊重する立場にある。
