原作について記述したことは、日本を代表するシャーロキアン(シャーロック・ホームズ研究家)である、小林司・東山あかね訳のシリーズ(河出書房新社)に拠っている。
原作のホームズの帰還はこうだ。ワトソンは通りで、古書店を経営していると思われる本を抱えた老人とぶつかる。その老人はワトソンのオフィスを訪れて、空いている本棚を埋める本をもってきて買うことを勧めるのだった。
「ここには『英国の鳥類』に『カタラス詩集』それに『神聖戦争』もっています――どれも掘り出し物です。あと5冊あれば、本棚のあの二段目が埋まりますな。あれじゃ、さまにならんでしょう」
わたし(ワトソン)が振り向いて、後の書架を見て、もう一回向き直ると、なんとシャーロック・ホームズが、書斎机越しに私に笑いかけているではないか。わたしはびっくり仰天して、しばらく彼を見つめた。
友情の濃さを強く印象づける現代版
「シャーロック 3」は、テンポの良い音楽とともに、ホームズがレストランに現われる。
ワトソンが恋人のメアリーを待っている。婚約指輪をながめている。プロポーズをする場面を予想させる。
ホームズは、ウエーターのふりをして、客の蝶ネクタイと眼鏡をとり、女性客の小物入れから眉墨をとって口髭をかく。ワトソンにシャンペンの銘柄を勧めながら、「これは旧友との再会を意味します。飲んでいただければ驚かれますよ」
ホームズが正体を現す。「手短にいうと死んでいない。いや、びっくりさせて。おもしろかったから許されるだろ」
ワトソンは原作のようにはいかない。「2年もだぞ。どんなにつらかったことか」
プロポーズのシーンは裏切られて、ワトソンとメアリー、ホームズはパブに場所を移して話し合う。ワトソンはホームズにつかみかかる。
現代版は原作からちょっと筋が逸脱しているようでいて、ホームズとワトソンの友情の濃さを強く印象づける。