おざなりCSRでは続かない
3月中旬、インドネシアの小学校に絵本を贈る式典がジャカルタ市内で行われた。「ゴミ山」の子どもたちにも届けられた絵本を企画し配布したのは、NPO法人のクロスワイズ。絵本を通し「心をつなぐ生き方」を世界の子どもたちに伝える活動を行う。横井恵子代表は「子どもたちが学ぶきっかけになれば」との想いで絵本を配る。式典は着地点ではなくスタートだとも強調する。
絵本寄贈の資金を提供したのは、同国への進出を本格化させるNTTデータだ。新興国はこれから社会インフラ整備が本格化する。とくに有望な市場とみるインドネシアで認知度向上を図りたい。そこに絵本贈呈があり、教育支援という形で社名を出すことになった。
同社社会貢献推進室の吉岡功二室長は「グローバル化を進める当社にとって、事業進出する国への社会貢献は、認知度向上にもつながります。広告宣伝など短期的な展開はすぐに忘れられてしまう。10年、20年先を展望した継続的な活動こそ当社の価値を高めてくれるはず」という。社会貢献による認知度向上は、売名行為と捉えられがちだが、「結果として教育を受けられる子どもたちが増えれば」と吉岡室長は問題視しない。
絵本寄贈の先にある具体的な社会貢献策は、これから検討する。今回交流したボランティアたちと連携した展開や、社員の海外研修の一環として現地教育への関わりをもたせることなどを考えていきたいという。
「ゴミ山」から抜け出せる子どもたちを1人でも増やしたい。その想いで活動するジャカルタのボランティアたちは、教育こそが解決手段と考える。長期的な展開だ。それを企業が支援することを検討している。おざなりなCSR(企業の社会的責任)の発想では続かない。本社主導の海外活動には限界もある。現地法人をどこまで巻き込んでいけるか。まだ課題はある。
企業の社会貢献のあり方は千差万別だが、とくに海外への教育支援では学校建設など物的な面が多く継続性がない。求められているのは運営などソフト面での支援。「各国の現法が、その国の状況に合わせた社会貢献を行う。そんな仕組みを検討する必要があるでしょう」と吉岡室長は構想を語る。
情けは人の為ならず。社会貢献の姿も同じでいい。
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