2025年12月6日(土)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2025年10月11日

 「米軍は長年、様々な高位のポストに、初めてのアフリカ系や初めての女性といったように、人種や性別といった誤った理由に基づいてあまりに多くの指導者を昇進させてきた」とヘグセスは批判を始めた。そして、もはや自分のアイデンティティを祝うアイデンティティ月間も、多様性を推進するための部署も、女装した男性もいらないし、地球温暖化崇拝も終わりだと具体例を羅列したうえで、「そのようなクソみたいなことはもう終わりだ」とした。これまでの民主党政権、特にバイデン政権が推進してきた様々な政策を終わらせようというのである。

表面的な個性の表現はいらない

 中でも聴衆である将官たちを驚かせたのは、具体的な指令であった。それは、「すべては身体能力と外見から始まる」という言葉から始まった。戦闘部隊やあらゆる部隊を見渡して太った兵士がいるのはうんざりするし、世界の司令部やペンタゴンの廊下に太った将軍や提督がいるのは容認できないので、新兵から四つ星の将官まで、年二回の体力測定を義務化するというものであった。

 そして体力の基準が、これまで職種ごとに異なっていたのを、軍事専門職種のすべての構成員に対する要求事項を、最高水準の男性基準のみに回帰させると命じた。この基準は女性にも適用され、特に2015年に女性に対して設けられていた男性よりも緩い体力基準を廃止し、女性も男性の最高基準に合わせるとしたのである。

 基準はすべて一律の「能力」によるものとした。これは歴史的背景を配慮してアフリカ系などを優遇する積極的差別是正措置廃止の流れに沿ったもので、すべて「能力」のみで平等に評価するというものである。ヘグセスは、「女性を軍に入れないと言っているのではなく、同じ基準で評価するだけだ」と言う。確かにある観点からすると平等だが、結果的に白人男性が有利になるのもまた事実である。

 体重に加えて、ヘグセスは、髭や長髪の禁止も打ち出した。表面的な個性の表現はいらないというのである。肥満の禁止と合わせて、プロ意識に欠ける外見の時代は終わったと宣言した。

相手を慮った指導はしない

 加えて、ヘグセスは、危機回避文化の時代は終わると宣言した。相手のアイデンティティなどいかなるものも傷つけないように気遣って、過度に敏感になるという指導の時代は終わるというのである。

 相手の性指向はなにか、どのような文化的人種的背景をもっているのかなどを慮って気を遣いすぎると、失敗を恐れて勝つことを優先できない軍人が育つと述べた。その流れで、匿名の苦情の申し立てをなくすなど、監察制度も大幅に見直す。とにかく自分たちは民間人ではないという自覚を持つべきとした。

 統合参謀本部議長などの解任については、彼らは「多様性は力」という「狂ったような誤り」を唱えさせられてきた世代で、誤った文化をつくり、そこから利益を得て来た人々であり、そのような人々に、その文化を変えることは不可能だからだと説明した。


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