2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月18日

 その上、イランは米国との関係において、見解の相違を抑え、新たな緊張が不必要に生じるのを防ぎ、緊張を徐々に緩和することで、慎重に対処する。欧州や他の西側諸国にも関与するとともに、中国、インド、ロシアとの友好関係を拡大、強化する。2015年まで非同盟運動の議長国として、「世界の南」の新興国と連携し、これら諸国の大きな潜在力を動員して世界の平和と繁栄に貢献する。

 このようなイランの努力が実を結ぶためには、他国が中東およびそれ以外の地域でイランが顕著な役割を果たすという現実を受け入れ、イランの正統な国家の権利、関心、そして安全保障上の懸念を認め、尊重しなければならない。また他国が、イラン国家の感受性、特に国家の尊厳、独立、成果に関する感受性に細心の注意をもって関心を払うことが重要である。

 西側、特に米国は、イランと中東のこれまでの理解を修正し、過去の分析上、実践上の過ちを避け、地域の現実をよりよく理解しなければならない。勇気と指導力をもってこの歴史的機会をとらえる必要がある。機会は二度と訪れないかもしれず、失ってはならない、と論じています。

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 この論文は、ロウハニが大統領に選出された昨年6月の直後の8月に、ザリフが外務大臣就任の承認を得るために、イラン議会に提出した政策ペーパーに基づき、核交渉などに関する最新の見解を加えたものです。外相任命の承認取り付けのため議会に提出した論文ですから、プロパガンダ的文書ではなく、真摯な意見の表明と考えてよいでしょう。

 論文は、ロウハニの登場は、イランの外交政策の全面的見直しを意味するもので、イラン、そして世界にとって、イランが世界と再関与するまたとない機会であることを強調しています。

 ただ、世界がその主張を素直に受け入れるには、まだ抵抗があるでしょう。イランが自己のパーセプションに関し、過去に大きな負債を抱えているからです。遠くはホメイニ革命が既存の国際秩序に対する挑戦と考えられ、米大使館人質事件もありました。近くにはアフマディネジャド前大統領の言動があります。ロウハニがイランは積極的に世界と関与したいと言っても、ただちには受け入れられないでしょう。イランが一つずつ言行を一致させていく必要があります。


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