ロシアの製油所には、対ドローン用のネットや防御用の構造物が導入されているが、ウウクライナの精緻な攻撃手法に対して十分な防御効果を発揮できていない。
二つ目は、「米国トランプ政権によるロシア本土攻撃への容認・支持」だ。バイデン前政権は、ウクライナによるロシア本土への攻撃は、エスカレーションへの懸念から否定的な立場をとっていた。特にロシアの製油所といったエネルギーインフラへの攻撃には慎重であったとされる。
トランプ大統領のロシア、ウクライナ両国に対する態度や発言は一貫していないが、今年8月、アラスカでの米露首脳会談後、ウクライナでの戦闘を止めないプーチン大統領に痺れを切らし、自身のSNSトゥルース・ソーシャルに「侵略国を攻撃しなければ、戦争に勝つことは非常に困難、いや不可能だ。まるで素晴らしい守備を持つスポーツチームが、攻撃を禁じられているようなものだ。これでは勝ち目はない!」と投稿。ウクライナによるロシア本土への攻撃を容認・支持する姿勢を明確にした。
米国務省やホワイトハウスはコメントを控えているが、米国は、ウクライナのロシア本土攻撃において、製油所を含むエネルギーインフラを標的とする作戦に対し、インテリジェンス・情報面での支援を行っている可能性が高い。
ロシアで着実に上がるガソリン価格
このロシアの製油能力を減退させるウクライナのドローン攻撃は、ロシアを二つの側面から揺さぶる効果がある。
一つ目は、ガソリン供給の不足と価格の上昇だ。ドローン攻撃された製油所の稼働停止により、ガソリンの供給不安が顕在化しており、9月25日付の露紙コメルサントは、ロシア全体の1.6%に相当するガソリンスタンド360軒が閉鎖を余儀なくされたと報じている。特にケルチ海峡経由のロシア本土からの輸送に頼るクリミアやセバストポリといった南連邦管区でのガソリン不足は深刻で、クリミアでは10月1日から個人のガソリン購入を20リットル上限とする配給制が導入されている。
ロシア連邦国家統計局のデータによれば、ガソリン価格は2月以降で9.5%上昇し、ディーゼルも3%以上値上がりした。これに伴い、ロシア政府はたまらず、全てのロシア企業を対象として、年末までガソリンを輸出禁止とした。さらに、ディーゼル燃料、船舶燃料やその他軽油についても、トレーダーや生産能力が年間100万トン未満の小規模製油所を対象として、輸出禁止する措置を発動している。
筆者は、今年10月初旬にロシア極東ウラジオストクを訪問する機会があり、ガソリンスタンドの混雑度合いを注意深く観察したが、大行列というものは見られなかった。ウクライナ国境から直線距離で約6500〜7000キロメートルに位置するウラジオストクにウクライナのドローンが飛来する心配がある訳でもなく、事態は落ち着いているように見えた。
もっとも2025年9月時点でのロシアのインフレ率は8.0%と高水準で推移しており、ガソリン価格のさらなる値上がりがロシア人の一般家計に打撃を与えていることは確かといえる。また、ロシアの国営テレビ(ロシア24やチャンネル1)はロシア製油所の被害拡大を抑制して報道しているようであるが、テレグラムやSNSを通じて、ドローン攻撃によって炎上するロシアの製油所の映像を確認することは可能で、さらなる製油所への攻撃により、ロシア市民の間に不安や動揺が広がる展開もあるだろう。
