2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2014年6月20日

個別的自衛権/集団的自衛権の違い
THINKSTOCK(3)
出所:各種資料よりウェッジ作成
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 第1に、高島益郎外務省条約局長は、集団的自衛権は「政策論的に行使しない」だけだと言い、真田秀夫内閣法制局第1部長は「憲法解釈上行使できない」と言うが、政府の立場はどちらなのか。

 第2に、個別的自衛権と集団的自衛権との間に自衛権としての差異はないはずであるから、個別的自衛権で武力行使できるのなら集団的自衛権でも武力行使できるはずであり、固有の権利を憲法解釈論で行使しないのなら、それは政策論との混同である。

 第3に、集団的自衛権が憲法で禁じられているのなら、なぜサンフランシスコ平和条約や日米安保条約、日ソ共同宣言でこの権利を確認したのか、むしろこの権利は持たないと明記すべきではなかったか、等である。この水口議員の指摘は、いずれも正鵠を得ているが、政府は政策論と憲法解釈論を混在させたまま、81年の政府「答弁書」に引き継がれて、集団的自衛の権利は「保有」するが「行使」できないとする、何とも不自然・不可思議な政府解釈として定着するのである。

 しかし、今日、わが国を取り巻く安全保障環境は、報告書冒頭の諸事例が示すように、30年前と比べて、きわめて深刻なものとなっている。日本が東アジア地域で果たす役割も一層重要なものとなってきていることを考えると、米国をはじめ、わが国と密接な関係にある諸国との連携の上に、安全保障のあり方を模索する時期に来ている。その一環として、集団的自衛権の「行使」を容認することが望ましいと考えるのは、今日、決して国民の一部にとどまるとは思われない。

個別的自衛権「拡張」論の陥穽

 米艦防護やミサイル攻撃などの場合、集団的自衛権を援用せずとも、個別的自衛権を「拡張」することで対応可能ではないかといった議論があるが、これは全く誤った考え方である。これも「蟻地獄」的発想の陥りやすい落とし穴と言えよう。

 なぜなら、個別的自衛権は、自国が武力攻撃を受けた時に反撃する権利だからである。自国が攻撃を受けていない場合には、個別的自衛権では反撃できない。並走する米艦が攻撃を受けたとしても、日本の自衛艦が攻撃を受けていない段階で、個別的自衛権の下に反撃すれば、「必要最小限度」の範囲をはるかに超えて、これはもう立派な国際法違反である。


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