2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年3月19日

 ウォールストリート・ジャーナル紙が、2月5日付社説で、日本の集団的自衛権行使を歓迎し、それにより日本が地域において民主国家の同盟を率いて中国に対抗することを期待し、また、戦後70年にわたり日本が平和に貢献し続けてきたことを指摘しています。 

 すなわち、安倍晋三総理は、憲法解釈を改め、67年にわたる、集団的自衛権の行使の禁止を終わらせようとしている。先月(1月)の施政方針演説では、4月に出されることになっている安保法制懇の勧告に従うことを示唆している。同懇談会は、第二次大戦後、マッカーサーによって書かれた平和主義憲法につき、新しい解釈を勧告することを示唆している。

 日本の集団的自衛権をめぐる問題は何か。日米安保条約の下では、米軍は、日本への武力攻撃事態の際に日本を援けに来ることになっているが、それ以外の形の義務はない。現行の憲法9条の解釈のせいで、自衛隊は、日本が攻撃されているのでなければ、米国を援けるために何もできない。例えば、日本の艦船は、日本を越えて米国に向かう、北朝鮮の弾道ミサイルを、黙って見過ごすしかない。

 日米両国は、現在、防衛ガイドラインの改定を行っている。過去の改定では、地域的危機における米軍の作戦に対する、日本の支援の役割が拡大された。しかし、これらは、その場しのぎであり、米国は、日本が集団的自衛権行使に向かい、こうした困難を終わらせるよう求めてきた。

 集団的自衛権は、日本にとって別の理由でも重要である。民主主義国が結束して専制の恐怖に対抗するというのが、第二次大戦後の世界秩序の要であった。欧州では、この考えに基づき、ソ連を抑止するためにNATOが設立された。対照的に、アジアでは、米国は、二国間条約と有志連合によって平和を維持し、共産主義を封じ込めてきた。中国の台頭は、このパックス・アメリカーナに圧力を加えている。今や、ワシントンは、同盟国同士が協力することを必要としている。

 東京が他の国々と、正常な原則に基づく同盟を作ることができれば、穴を埋めることが出来るかもしれない。ASEANは、今のところ、経済および安全保障に関する機構の核とはなり得ない。東京に率いられた民主国家の連合が、中国の侵略的な専制主義に対するカウンターウェイトとして、もっと効果的であろう。

 まだ、内外に政治的厄介を抱えてはいる。大衆の多数派が集団的自衛権には反対しているし、安倍内閣は、平和主義を唱える公明党と連立している。集団的自衛権行使を実現させることはできるだろうが、公明党は連立を離脱するかもしれない。一つの可能性としては、野党の中道右派勢力が自民党に合流する、政界再編のシナリオがある。


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