2025年12月10日(水)

21世紀の安全保障論

2025年11月17日

 台湾有事と存立危機事態を巡る高市早苗首相の発言を奇貨として、国会における「秘密会」の運用など議論や審議を改善し、ルールづくりを急ぐ必要がある。

高市首相の予算委員会での発言が波紋を呼んでいる(つのだよしお/アフロ)

 高市首相の発言の経緯は、11月7日に開かれた衆議院予算委員会で、立憲民主党の岡田克也氏が「首相は1年前の総裁選で、中国による台湾の海上封鎖が発生した場合、『存立危機事態になるかもしれない』と発言した。どういう場合になると考えるか」と質問したことに端を発している。

そもそも公開の場で議論する内容なのか

 高市首相は当初、「すべての情報を総合的に判断しなければならない」などと答弁、この答えを受け入れ、岡田氏が次の質問に移っていれば良かったのだが――。

 何らかの言質を引き出そうとしたのか、岡田氏は続けて、台湾とフィリピンの間のバシー海峡が封鎖されるといった具体的な状況を想定し、日本の対応を問いただした。これに対し高市首相が「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得る」などと踏み込んだ内容の答弁をしてしまったというのが、今回の経緯だ。

 当日の夜、筆者がこのやり取りを報じるニュースを見た率直な感想は、「一般に公開されている予算委員会の場で議論する内容か」という驚きだった。質問者は外務大臣の経験者でもあり、安倍晋三政権下で新設された概念とはいえ、「存立危機事態」の重みを理解し、どのような状況であれば事態を認定するのかといった具体例、イコール「機密」を明示することのデメリットは重々承知していると思ったからだ。


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