2025年12月10日(水)

令和の京都地図

2025年12月10日

 京都市は、古都としての文化資産と景観に恵まれ、インバウンドの増加など観光面で注目される。京都市外の人からみれば、「観光客も多く、さぞかし財政的にも潤っているのではないか」と思えてしまう。

京都市内を走るバスは、一般市民が乗車できないほど、観光客で混雑することもある(MIKE ABRAHAMS/GETTYIMAGES)

 しかし、内実は厳しい。京都市は2002年度以降財政難が続き、将来の市債返済に備えた積立金である公債償還基金を取り崩したり、国の交付税措置がない行政改革推進債を発行したりするなど「特別の財源対策」に依存して、何とか財政赤字を補填してきた。

 なぜそうしなければならないか。それは、「第二の夕張市」にならないためである。市の実質財政収支の赤字が一定以上になると、北海道夕張市が現在、唯一指定されている「財政再生団体」に転落する。財政再生団体になると、借金返済が優先され、歳出削減や増税が待ち受ける。

 その後、京都市は22年度に22年ぶりに特別の財源対策に依存せずに一般会計の黒字化を達成した。さらに24年度決算では58億円の黒字を計上した。黒字化の背景には大きく三点がある。第一に地価上昇に伴う固定資産税の増収、第二に観光回復による宿泊税収の伸び、第三に歳出面での抑制である。人件費抑制や市の敬老バスの値上げ、敬老乗車証の対象年齢引き上げなど市民サービスの見直しが含まれる。

 近年の改善をみて、「税収が増えた=市民サービスに余裕ができる」というのは短絡的である。

 加えて、まだ過去の財政難のツケは残っている。公債償還基金の残高は、前述した取り崩しがあったために、あるべき残高より17%少なく425億円足りない状態である(25年度末見込み)。また、その残高の一部は、赤字地方債で賄われたお金で積み立てられている。赤字地方債の返済財源は、将来国からもらえる地方交付税と想定されているから、将来的には帳尻が合うかもしれない。

 しかし、京都市の税収が今後増えると、制度的に地方交付税はその分減額される。税収増は一見すると喜ばしいが、その分地方交付税は減らされ、公債償還基金の元手となった赤字地方債の返済は、地方交付税ではなく、増えた税収から原資を出さなければならなくなる。それ自体は、財政上健全なことなのだが、将来の税収増はその分だけ赤字地方債の返済に優先的に回り、市民サービスのためには使えなくなる。


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