また、京都市は他都市に比べて宗教法人や学校法人が多く、税収につながりにくい構造的な問題も抱えている。宗教法人や学校法人は非営利法人で、利益が増えればより多く税金を払うということにはなっていないからである。また、学校に通う学生のほとんどは、所得を稼いでおらず、個人住民税を払う住民ではない。
政令市として140万人強の人口を擁している京都市だが、税収が自ずと多く入ってくるという構造にはなっていない。本来ならば、住民サービスの向上を図るために、便益を受ける住民に応益原則で税負担を求めるのが基本である。しかし、前述のようにOTによって住民が不便をきたしている中で、いきなり個人住民税の増税と言われても、多くの賛同は得られないだろう。
未来への投資に向けて
税収確保のためにできること
それを踏まえて、税収を確保する一案として、宗教法人や学校法人を中心に法人住民税均等割の増額を条例で制定する方法も考えられる。法人住民税均等割とは、法人が所在する地方自治体に対して納める地方税で、法人の規模に応じて区分した上で、同一区分内において同一額を課している制度だ。
あくまでも思考実験ではあるが、例えば宗教法人や学校法人に一法人当たり現行年5万円のところを、倍の10万円に増やすことを検討してみることも一案ではないか。京都市の法人住民税均等割の税収は、民間企業の分も含めて56億円である。対象を広げたり、額を増やせば、それなりの税収が得られよう。それによって得られた税収は、子育て・教育支援の拡充など、適切に市民に還元するという視点も重要だ。
京都市は私立学校が比較的多いが、若年層の人口が近年顕著に減少していることを踏まえると、市立学校の教育の充実を図ることで、人口減少対策になりえる。また、前述したように、公債償還基金の残高不足によって、将来税収増があっても住民サービスの向上につなげられないという事態が起きないよう、残高不足解消を目指して、引き続き財政再建に取り組むことも不可欠である。
京都の市民も企業も、「京都に根を張る」メンバーシップ意識が強いとされる。その意識を土台にしながら、京都市への納税意識と財政再建への貢献意識を喚起することが重要である。そのためにも、総花的ではなく、市民生活の改善という一点に集中して財政支出を行うという視点も必要だ。
かつて、炭鉱閉山後に観光で再生を果たそうとした夕張市は、スキー場やホテル、記念館などの過大なインフラ投資で財政破綻した過去がある。京都が二の舞になってはならない。京都は日本においてユニークな都市であり、これからも日本人にとっても、外国人にとっても、魅力ある都市であり続けてほしい。また、減少が進んでいるとはいえ、全国で8番目に人口が多い市である。だから、取りうる政策の選択肢は多い。その優位性を生かして、未来への投資のための原資を確保し、市民生活にも、観光客にも、住んでみたい、(再び)訪れたいと思えるまちづくり、魅力あるまちづくりのため、それにふさわしい質の高い投資を行えるようにしていくべきであろう。

