2025年12月13日(土)

21世紀の安全保障論

2025年11月17日

国会は「秘密会」の運用と向き合え

 そのための手立てとして、国会は安全保障をめぐる問題を審議、議論する場として、秘密会の実施を考える必要がある。「秘密会」については憲法に規定が設けられており、第57条は衆参両議院の会議は公開を原則とするものの、出席議員の3分の2以上の賛成で秘密会にできるとしている。

 過去には、2010年に沖縄・尖閣諸島沖で発生した中国漁船による海上保安庁の巡視船に対する衝突事件で、海保が撮影した中国漁船の悪質さを証明するビデオ映像が、秘密会とした衆参両院の予算委員会で公開されたケースなどがある。だが、情報漏れへの懸念から、安全保障など国家機密に関する国会審議は難しいと指摘されている。

 この問題は13年に成立した「特定秘密保護法」を審議する過程でも議論されている。同法の規定では「行政機関の長は、非公開の秘密会の開催を条件に、特定秘密を開示する」と定められているが、秘密の提供を受ける国会議員の範囲や漏洩防止策などの検討は進んでいない。

 今回、高市首相が予算委員会で答弁した内容は、「中国海軍の艦艇」ではなく、無造作に「戦艦」という言葉が使われていたように、質問内容について防衛省に諮らず、自らの知識に基づいた考えを吐露したに過ぎないと思われる。しかし、同じような内容であっても、同省や国家安全保障会議で議論し、確立した「存立危機事態となるケース」であれば、その内容は間違いなく特定秘密に指定されるはずだ。

 今回の問題の本質は、そうした重要な内容について、公開された委員会で質問し、答弁することの危うさを露呈している。国会は秘密会の運営を含め、安全保障をめぐる問題への関与のあり方を急ぎ検討する必要がある。

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