2025年11月22日付フィナンシャル・タイムズ社説が、トランプの世界観は冷笑的、自己中心的でカネ最優先だ、最近の米国のウクライナ和平提案はロシアへの降伏だと強くトランプを批判している。
トランプ第二期政権になり、トランプは自身の考えを側近にさえ推測させるために、気紛れな姿勢の演出を楽しんできた。しかし、あらゆる曖昧さがなくなった。彼の世界観に潜む真の冷笑的、カネ最優先、自己中心的な本性が露呈した。
最初に起きたのは、サウジアラビア皇太子ムハンマドを迎えたホワイトハウスでのことだった。1兆ドル規模に及ぶ取引を賛美する一方で、サウジ当局によるジャマル・カショギ記者殺害をめぐる懸念をトランプが暗に嘲笑したのだ。トランプは、カショギ殺害について記者に問われ「色々の事は起こるものだ」と答えた。それは最早、正義と自由を推進してきた米国の歴史を無視し、唯一重要なのはカネだけだとの世界の専制国家等に対する明確なメッセージのように見えた。
次に、新たな米国のウクライナ和平案が明らかになった。最近、欧州の当局者達はプーチンに圧力を強めることこそが戦争終結への唯一の道だという彼らの考えに、トランプが歩み寄りつつあると信じ始めていた。
ロシアの石油企業ロスネフチとルクオイルへの米国の制裁や、欧州諸国の資金提供による米国製兵器のウクライナへの供与は、トランプがついにプーチンへのしびれを切らしたことを示すとの感触を強めていた。トランプ政権の28項目ウクライナ和平提案は、かかる考えがいかに甘かったかを露呈した。提案には、ウクライナが今なお支配している領土を割譲し、軍の規模を縮小するよう求める一方で、西側からの明確な安全保障は何ら示されていない。
傷口に塩を塗るように、この提案は和平構築を米国への「魅力的なビジネス機会」と捉えている。1000億ドルの凍結ロシア資産は、米国主導のウクライナ経済再建に投資し、その利益の50%を米国が受け取るという。
紛れもない印象は、トランプが、ウクライナにどれほどの犠牲を強いようとも、兎に角早期の合意を望んでいることだ。これにより、彼は執拗に追及するノーベル平和賞への「もう一つの和平実績」を主張できる。また国内では、経済へ軸足を移すよう圧力がかかっている。
