2025年12月14日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年12月1日

 台湾では、人々の注目は専ら米中首脳会談に集中したが、台湾にとって重要なのは、この会談前に行われた日米・日中・日韓首脳会談も含めた広い文脈の中で米中と台湾の関係を考えることだと2025年11月2日付の台北タイムズ社説が言っている。

(dvids・ロイター/アフロ・alexis84/Amguy/gettyimages)

 台湾の人々の関心は、韓国で行われたトランプ大統領と習近平主席の会談にひたすら集中し、会談で習は台湾問題を取り上げるのか、またトランプは貿易で有利な条件を確保すべく台湾を売り渡すだろうかと疑問を抱いた。トランプは取引好きで、台湾に不利な発言をするのではないかとの疑心暗鬼があった。

 結局、会談で世界の二大経済大国の首脳は貿易問題に終始し、共に緊張緩和への意欲を示し、関係再構築をうたった。

 台湾問題が協議されるとの憶測は、米中間以外の活発な外交的やりとりから人々の目をそらさせてしまった。台湾にとって重要なのは、他から切り離されたトランプ・習会談だけではなく、その前の東京でのトランプと高市早苗首相の会談、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の合間に行われた習と高市首相の会談、そして高市と李在明韓国大統領との会談も含めた大きな文脈の中で何が学べたかだ。

 トランプ・習会談が関係の再構築を打ち出したことは、習は、国際秩序を破壊しようとしているにも関わらず、中国経済が深く米国経済と関わっていること、そして国内の経済問題に対処するには自国の安定化が重要であることを認識しているからであり、さらにはトランプも米国について同様の現実を自覚している。

 トランプ・高市会談は、米日同盟の強靭性と、両首脳が国家安全保障、防衛支出、自由で開かれたインド太平洋、そして台湾海峡の平和と安定を重視していることについて力強いメッセージを送った。また高市は、日本が「前例のない厳しい安全保障環境」に直面しているとも指摘し、これはこの地域における中国の行動への言及と解することができる。

 実際、高市は習との会談では南シナ海について重大な懸念を表明し、日本が管轄する東シナ海の尖閣諸島周辺における中国の行動を問題として提起した。国家安全保障に関する安倍晋三元首相の懸念を継承する彼女の政策は、彼女の台湾との親和性と共に台湾を安心させるものだった。


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