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2014年6月20日

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井上久男 (いのうえ・ひさお)

ジャーナリスト

1964年生まれ。88年九州大学卒業後にNEC入社。92年朝日新聞社に転職。主に経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。著書に『メイド イン ジャパン 驕りの代償』(NHK出版)。近著は『自動車会社が消える日』(文春新書)。

 13年からキャリアコーチを務める安藤祐輔氏は、販売マーケティング分野でグローバルに人材発掘の任に当たっている。ルノー出向時に営業部長としてアジア・アフリカ地区60カ国を担当した経験などが買われた。「潜在能力が高い人材が成長するのを阻害する要因があれば、それを取り除くことも私の仕事」と安藤氏。就任以来、すでに約300人と面接。「常に副社長クラスの経営トップとも会い、今の日産が取り組むべきビジネスの優先順位を頭に入れ、必要な人材が求められればアサインできるようにしている」。

 キャリアコーチが発掘した人材を登録するのが「NAC」だ。役員など幹部登用が検討されている人材はすべてここに登録・管理される。「NAC」には、リージョナル、ファンクショナル、コーポレートの3つがあり、地域ごと、生産や開発などの部門ごとに優秀な人材をクロスチェックでノミネートしていく。地域と部門で登用すべき人材が食い違う場合は、ゴーン社長ら経営トップで構成されるコーポレートNACで最終的な結論を出す。

 NECや日本GE、米国のヘルスケア企業の人事部門に在籍した経験があり、人事制度に詳しい法政大学政策創造研究科の石山恒貴教授はこう説明する。「日本企業では良品計画が、業務の見える化と人材の見える化を通じて全社で人材の最適配置を実現させている。ただ実感的には日本企業では、人材の見える化はまだ難しい課題。

 GEでは人事部がビジネスの現場と近く、どのようなスキルを持った人がいるのか、リーダーシップはあるのかということを把握していた。こうしたことができるようになるためには、まず、会社にとって重要なポジションとは何かを決め、人材の棚卸しや見える化のシステムを通じて、適任者をそのポジションに合理的に就けていくことが求められる」。

 電機メーカーの人事部は、人事労務部門一筋の人が多く、ビジネスの現場を知らない傾向にある。

 評価システムなど人事制度の構築には長けているが、新規事業や課題を抱える事業に対して、対応能力のある人材を全社横断的に発掘し、経営陣に推薦するノウハウをほとんど持たない企業も多い。たとえば、NECでは、新規事業を立ち上げる際に、各事業部から人材を集めようとしたが、優秀な人材は事業部が囲い込んでしまうため、遠藤信博社長が人事部に対して人材発掘システムの構築を急ぐようにと指示したが、まだ成果は出ていない。

 「タコツボ人事」がはびこった結果、人材という「宝の山」を自ら捨てるようなリストラに追い込まれているように思えてならない。

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