女性が社会で広く活躍することは日本の重要な政策課題になっているが、その取り組みは遅れている。日本の女性の管理職比率、取締役比率は国際的に見て極めて低い。立法議員、上級行政官、管理的職業従事者に占める女性の比率を見ると、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、オランダ、イタリアが、それぞれ43.7%、39.4%、34.2%、28.6%、29.1%、25.8%であるのに対し、日本は11.9%にすぎない(労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2014」第3-4表)。イタリアもヨーロッパの中では低い方だが、その解決策として女性の取締役の比率を法的に割り当てるという興味深い試みをしている。イタリアだけでなく、フランス、オランダなどでも同様の制度があり、EUの欧州員会は、取締役会における女性の比率を40%にしようという勧告を出そうとしている。これについては、もちろん、多くの国が賛同している訳だが、同時に、英、オランダ、旧東欧諸国が明確に反対、スウェーデン、ドイツも賛成していないということだ。
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ロベルタ・プロヴァシィ ミラノ・ビコッカ大学准教授
パトリツィア・リヴァ 東ピエモンテ大学准教授
インタビュアー:原田泰(早稲田大学政治経済学術院教授・東京財団上席研究員)
――本日は、女性の社会進出について、イタリアばかりでなく、ヨーロッパ全体の状況と問題点をお聞きしたいと思います。まず、イタリアの状況を説明して下さい。
イタリアの女性の社会進出はヨーロッパの中では遅れていました。上場企業の取締役会における女性の占める比率は12.9%で、EU加盟27カ国の中で16番目、一番高いフィンランドの29.1%、平均の16.6%よりかなり低いのです(European Commission, Database on women and men in decision-making)。そこで、その値を2020年までに3分の1以上にするという法律が2011年に制定されました。その結果、2003年には2%でしかなかったその比率が、2013年には12.9%にまで上昇したのです。
――イタリアはスペインやポルトガルなどとともにマッチョ文化の国であると思っていましたので、女性比率の割当という斬新な政策が採用され、それによって社会が変化しているというのは驚きです。
イタリアの男性は男らしいのではなく、私に言わせれば、母親が必要なだけで子どもっぽいのです。男性も、実は女性の社会進出という変化を受け入れていると思います。