経済の常識 VS 政策の非常識

2014年6月17日

»著者プロフィール

――メリトクラシー(業績主義、能力主義)が効率を上げると言っても、能力の測定は客観性に欠けるものです。その中で、イタリアの大学での男女の成績は興味深い結果です。前述のあなた方の論文では、大学生の中で女子学生の比率は60.1%を占め、期間内に学士号を取る学生の比率は、女子学生が40.6%であるのに対し男子学生は37.0%です。さらに、大学卒業時の統一試験での成績は、女子学生が104.2点であるのに対し、男子学生は101.4点であると書いています。いずれも女性が上ですね。

パトリツィア・リヴァ(Patrizia Riva)
1970年ミラノ生まれ。2003年 東ピエモンテ大学講師。2006年 同准教授 公認会計士 国立公認会計士審議会委員。1993年 ボッコーニ商業大学学士。2000年 ボッコーニ商業大学経営経済学博士(PhD) 。主要論文 プロヴァシィ准教授に同じ

 ここにはイタリアの伝統があります。昔は、どの国も同じだったでしょうが、女性の職は教師、看護師、秘書しかありませんでした。イタリアで、教師の給与は低いのですが、労働時間は週18時間で、25年働くと退職して年金がもらえました。もちろん、今ではそんなに早く年金をもらうことはできません。低成長が続き、政府は大赤字ですからね。ともかく、昔は、子どもを育てたい女性にとって、教師は理想の職でした。ほとんどの教師が女性です。大学に行って真面目に勉強して教師になるというのが女性の理想になったのです。成績の良さは、その伝統の反映でしょう。また、小学校教師の娘が高校教師になり、高校教師の娘が大学教員になるという例も多いのです。イタリアの大学の学部長は多くが女性になっています。会計士、弁護士、医師などの専門職に女性が多いというのも同じ伝統の反映でしょう。

――強制的に比率を決めるというのが企業の効率を低下させるということはありませんか。

 いや、女性が活躍している、役員会の女性比率が高い企業ほど利益率が高いというマッキンゼーの研究もありますよ(McKinsey&Company ‶Women Matter 2010")。

――なるほど。確かに、日本でも管理職に占める女性の比率が高い企業ほど成長率が高い、利益率が高いという研究があります(児玉直美・小滝一彦・高橋陽子「女性雇用と企業業績」『日本経済研究』No52、2005年10月)。しかし、それには因果関係が逆ではないかという批判もあります。つまり、日本では小さな企業が優秀な男性を採用することが難しかった。そこで女性を採用した小企業のうち、急成長した企業が大企業になった場合、女性の管理職比率が高くなったのだというのです。

 そういうことがあるかもしれません。しかし、割当制は、教育的効果を狙ったもので、永久に続くものではありません。2020年までに3分の1以上にせよというもので、それ以降、続けても続けなくても企業の自由です。したがって、女性の割当が企業の効率を低下させるということはあまり考えられません。

関連記事

新着記事

»もっと見る