経済の常識 VS 政策の非常識

2014年6月17日

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――割当制で女性の社会進出が進んだのは分かりました。しかし、それは能力主義の原則に反するという議論もあると思いますが。

ロベルタ・プロヴァシィ(ROBERTA  PROVASI)
1967年 ミラノ生まれ。2005年 ビコッカ大学経営会計学科助教授。2011年 ビコッカ大学監査企業統治学科准教授 公認会計士 経営学博士修士科学委員会委員。1991年 ミラノ・カソリック大学 経営経済学士。2002年 パヴィア大学 経営学博士(PhD)。主要論文 "An Overview about Italian companies facing the financial and economic crisis. A cultural revolution", co-author Patrizia Riva in International Journal of Economics and Business Research, Vol 7/2014, ISSN 1756-9850. “Women in the boardroom. The Italian experience: law against embedded tradition”, co-author Patrizia Riva forthcoming in International Journal of Economics and Business Research. “ Crisis and Controls: The Italian Model”, co-author Patrizia Riva, in Corporate Ownership & Control, Vol. 11, Issue 1, 2013, ISSN 1727- 9232;

 イタリアでは、そもそも女性であるというだけで、意思決定過程から排除されていたのですから、現状が能力主義ではないのです。確かに、取締役会のメンバーに相応しい女性がどれだけいるのかという問題は指摘されていました。しかし、割当制が導入されると、人材斡旋会社が、相応しい女性を探し、経歴を整理して、企業に紹介しようという動きが始まりました。なお、イタリアの場合、会計士、弁護士、大学教授などの専門職に就く女性が非常に多いので、一般的な能力として、資格のある女性はたくさんいます。もちろん、企業の注文は千差万別ですから、企業との面接も盛んに行われています。それを通じて、より多くの女性が企業に知られるようになったのです。

――企業の内部昇格で管理職、取締役を増やそうという動きはないのですか。

 その動きは遅れています。また、2020年までに3分の1にするという割当制を満たすには間に合いません。

――女性が昇進できない理由について、あなたたちの論文(”Woman in the boardroom – the Italian experience: law against embedded tradition,” presented to the conference on Corporate Governance, Milan, Italy, May 8, 2014))では、イタリア、あるいは他の先進国でも、1)企業の上級幹部は男性だけのコネ社会の要素が強いこと、2)女性は指導力に欠けるというステレオタイプの見方があること、3)上級幹部になる女性のモデルが欠如していることを挙げています。このうちのどれがもっとも重要な要因でしょうか。これと割当制とがどのように関係しますか。

 いずれもが要因ですが、モデルの欠如は大きな要因と思います。割当制は、役割を作ることになります。例えば、私自身、社外取締役をしているのですが、私の娘は母親をモデルとすることができる訳です。もちろん、私の若い同僚もそうです。ステレオタイプの見方も、現実に取締役になる女性が現れることによって打破できます。男性だけのコネ社会というのは事実ですが、企業統治の透明性のために、独立性のある取締役が必要だという認識が広がってきたことも大きいのです。女性と独立性のある取締役の両方を増やさなければならないという社会の要請があるのです。

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