また、現状では、東京が日本経済のけん引役の一端を担っていることは間違いない。もし副首都の実現が東京の活力を削ぐ可能性があるのであれば、それが東京の集積の経済の変化と混雑の不経済の変化を通じて、日本全体にどのように影響するのかも検証する必要がある。
これについて、中国の中央財経大学のフアン教授らはミャンマーの首都移転の効果を検討し興味深い結果を得ている。ミャンマーでは、05年にヤンゴンからネピドーに首都が移転された。その経済成長への影響を、人工衛星による夜景観測データを用いて、夜景の明るさの変化から国内総生産の成長率を推定する手法を用いて明らかにした。
その結果、ネピドーでは05年から09年までの間に明るさが大きく上昇し、ヤンゴンでは若干低下したものの、国全体としては明るさが低下し、経済状態が悪化したことが分かった。
このことは、もし日本で首都機能を移転して、移転先を栄えさせたとしても、東京が地盤沈下してしまうと国全体では衰退してしまう可能性を示している。したがって、経済振興としての副首都構想は、東京の活力を奪わないように配慮したものになるよう注意すべきであろう。
災害への対応
もう一つの副首都の目的である災害時の首都機能の維持についてはどのようなことに留意すべきであろうか。東京が大災害に見舞われた場合に、首都機能が東京以外にもあれば、国政の機能を一度に喪失するのを避けられる可能性がある。その対策として副首都を作る場合、首都機能の一部を移転する方式と、そのコピーを丸ごとバックアップとして設置する方式が考えられる。
前者の場合、首都機能を移転しても、とある首都機能は1カ所にしか存在しないため、そこが災害に見舞われた時にその機能を失うリスクがある、という点は変わらない。移転候補地の方が東京より災害に見舞われる可能性が低いことがはっきりわかっていなければ、災害対応力が強まるか弱まるかは判然としない。
