2025年12月14日(日)

都市vs地方 

2025年11月28日

 それに対して、後者では、災害が2カ所同時に起きない限り、首都機能の喪失を免れられる。もちろん、同じ機能を2カ所に持つということは、平時においては行政の非効率を生む可能性がある。その費用と災害リスクから予想される損失とを天秤にかけて、損得を注意深く吟味する必要がある。

 また、このバックアップ方式では、東京の活力をそのまま維持できる可能性も高い。東京の首都機能はそのまま維持されるわけであるから、副首都の周辺地域にとってアクセスの利便性が改善する。ここでも、その便益と同じ機能を2カ所に持つことの費用との比較になる。

合意形成への含意

 最後に、首都機能の移転を議論する際に必ず生じる合意形成の問題を議論しておこう。各都道府県で選ばれた国会議員が国会で議論するわけであるから、副首都の実現により不利になる地域選出の議員は当然反対する。すると、もし副首都が一部の首都機能の移転を伴うのであれば、その移転された機能から遠ざかる地域は移転に反対するようになる可能性が高い。

 移転が国全体の合意を必要とするのであれば、副首都の実現可能性を大きく損なうことになるであろう。首都機能を移転するのではなく、首都機能を持つ場所をもう一つバックアップとして作るのであれば、首都機能に近くなる地域は生じても、遠ざかる地域は原則として生じないため、先述のような合意形成の困難は克服できる可能性が高い。

 副首都は巨額の投資を必要とする一大プロジェクトである。しかも、ここで説明したように功罪両面が考えられ、必ずしも日本全体として社会厚生を改善できる保証はない。その潜在的な影響について、丁寧に定量的分析を行い、議論を尽くしてから意思決定してほしい。

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