ハマス内部の統率は取れているのか
トンネルに残された戦闘員が「火種」
一方で、ハマス内部も統率が取れていないように見える。
停戦交渉が続くなか、和平交渉に携わる幹部(ガザの外に拠点を置くハマス政治部門)が人質全員の解放を受け入れるなどこれまで見られなかった譲歩をしている一方、ガザ内部の軍事部門や現場の戦闘員を完全に統制出来ているのかは疑問が湧く。
対立する氏族らを銃で射殺する公開処刑なども、果たして上層部の指示によるものなのか、それとも現場判断で散発的に行われたのかも不明だ。
これは、現在もなお、ガザ南部ラファの地下トンネルに閉じ込められているハマスの戦闘員がコントロールの効かない「火種」となっていることとも重なる。トンネル内に残されているのは最大200人とされているものの、果たして、実際の人数が何人なのかはハマス自身も明確に把握していないとされる。
これらの指揮系統から外れた状態とみられる戦闘員らがイスラエル軍への突発的な攻撃に関与していた可能性も報じられており、停戦合意を脅かすいわば時限爆弾的な存在となっている。こうして、ハマス指導部がどこまで現場の戦闘員をコントロール出来ているのか極めて不透明な状態のなか、指導部自体も「武装解除」については一貫して難色を示している。
ただ、一つ明確に言えるのは、銃で射殺するガザ内部での粛清に対して大きな反発が起きたように、これ以上のいかなる流血も求めていないガザ市民にとって、ハマスの掲げる「抵抗の正義」は「恐怖の支配」と表裏一体であるという現実だ。
少なくとも、ハマスが敵対勢力から着々と武器を没収・保管している現状は、和平協議の「第2段階」で目指されるハマスの武装解除とは逆行している動きだ。そこでおざなりになっているのは「流血はもういらない」と、暴力のない平和を心から望んでいるガザ市民の思いである。
最終回の第3弾では、密かに発足していたハマスの新治安部隊「ラダア(Radaa)」の実態、和平交渉で求められる「武装解除」の陰で武器収集に奔走するハマスとイスラエルの思惑、そこで取り残されたガザ市民の悲痛な思いに迫る。
