アメリカのヘグセス国防長官
アメリカ海軍が9月にヴェネズエラの麻薬運搬船だとする船を攻撃したことについて、ピート・ヘグセス米国防長官の「皆殺しにしろ」との命令を受けて、1回目の攻撃を生き延びた船上の複数人に対して2回目の攻撃が実施されたと、米紙ワシントン・ポストが報じた。これに関して米政府は1日、2回目の攻撃は海軍司令官が命じたものだと説明した。
ワシントン・ポストは11月28日付の記事で、カリブ海で9月2日にあった船への攻撃について、1回目が終わった後、炎上する船にしがみついていた生存者2人に対し、ヘグセス氏の指示に従う形で2回目の攻撃が実施されたと報じた。
これを受け、共和・民主両党の議員らは懸念を表明するとともに、議会として攻撃を調査するとしている。
これに対してホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は1日、追加攻撃の命令について、「(フランク・)ブラッドリー提督が権限と法律の範囲内でうまくやった」と述べた。また、ヘグセス長官は攻撃を承認したものの、「皆殺し」の命令は出していないとした。
報道官はさらに、「(ドナルド・)トランプ大統領とヘグセス長官は、大統領が指定した麻薬テロ集団について、戦争法に従い、殺傷攻撃の対象になると明確にしている」と説明。「アメリカ合衆国を脅かしている者たちなら、大統領には排除する権利がある」とした。
報道官は、1回目の攻撃で生存者2人が出たことも、2回目の攻撃がその2人を殺すためだったことも認めなかった。
報道官によると、事態に懸念を表明していた議員らとヘグセス長官が週末に話をしたという。
ヘグセス長官はワシントン・ポストの報道があった先月28日、記事は「でっち上げ、扇動的、侮蔑的」だと反発していた。
また、船舶攻撃の目的について、「致死的な麻薬を止め、麻薬船を破壊し、アメリカ国民を毒する麻薬テロリストらを殺すためだと、意図を表明している」とソーシャルメディア「X」で書いた。
トランプ氏は30日、ヘグセス氏を「100%」信じていると述べた。
米議会が調査
ヘグセス長官が船上の全員殺害を指示したという報道を機に、カリブ海で米軍が麻薬船だとする船を攻撃していることの合法性があらためて懸念されている。
アメリカはここ数週間、カリブ海で軍事的な存在感を増大させている。麻薬撲滅作戦の一環だとして、ヴェネズエラとコロンビアの沖合の国際水域で麻薬密輸の疑いのある船を攻撃し、乗っている人たちを殺している。
こうした攻撃で殺害された人は、9月上旬以降で80人を超えている。
連邦議会上院の軍事委員会は週末、「(国防総省に)調査を指示しており、我々はこの状況に関連する事実を明らかにするため、精力的に監督する」とした。
同委員会のロジャー・ウィッカー委員長(共和党)は1日、「作戦を担当した提督」に事情を聴く予定だとした。また、「どのような命令だったのか」を確認するため、音声とビデオの提出も求めていると話した。
下院の軍事委員会も、この攻撃について調査すると表明。「問題の作戦の全容解明に向け、超党派で行動している」とした。
軍の最高幹部で構成する統合参謀本部は1日、声明を発表し、同本部のダン・ケイン議長が週末、上下両院の軍事委員会のメンバーと会談し、「南方軍の責任範囲における麻薬テロ対策作戦について」話し合ったと明らかにした。
トランプ政権はカリブ海での自国の活動を、麻薬密売組織との非国家間の武力衝突だとしている。
戦時国際法のジュネーヴ条約は、負傷した当事者を標的にすることを禁じ、負傷者らは捕らえて手当てすべきだと定めている。
かつてのバラク・オバマ政権では、米軍がドローンで複数回に分けて攻撃を実施したことで批判を浴びた。「ダブルタップ」と呼ばれるこうした戦法は、意図しない犠牲者を出すことがあるとされた。
ヴェネズエラの国会は先月30日、小型船への攻撃を非難し、生存者2人を殺害したとされる2回目の攻撃について「厳密かつ徹底的な調査」を実施することを誓った。
同国政府は、アメリカが政府の転覆を狙って地域の緊張をあおっていると非難している。
(英語記事 US Navy commander ordered second Venezuela boat strike, White House says)
