2025年12月6日(土)

BBC News

2025年12月5日

今年のユーロヴィジョンでは、2023年10月7日のハマスによる攻撃を生き延びた歌手のユヴァル・ラファエル氏がイスラエルを代表した。写真は5月にスイス・バーゼルで行われた準決勝のパフォーマンス

マーク・サヴェッジ音楽担当編集委員

主にヨーロッパの各国が参加する毎年恒例の歌合戦「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト(ESC)」で、来年のイスラエルの出場が認められたことを受け、アイルランドとスペイン、オランダ、スロヴェニアの4カ国は、2026年の同コンテストをボイコットすると発表した。ユーロヴィジョンをめぐっては、パレスチナ・ガザ地区での戦争や、不公正な投票慣行の疑いを理由に、複数の国がイスラエルの排除を求めていた。

スペインの公共放送RTVEは、スイス・ジュネーブで開かれた会合で、この問題について秘密投票を行うよう率先して求めた。RTVEは、主催者がその要請を拒否したと述べ、このことが「フェスティバルの運営に対する(我々の)不信感を高めた」と述べた。

アイルランドの公共放送RTEは、「ガザでの甚大な犠牲と、ガザでの人道危機が多くの民間人の命を危険にさらし続けていることを踏まえると、参加は到底容認できない」と表明した。

スペインは、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスと並ぶ、ユーロビジョンの「ビッグ5」の一国だ。この5カ国の放送局は欧州放送連合(EBU)に最大の資金を拠出しているため、出身アーティストはユーロヴィジョンで決勝への直接進出が認められている。

BBCを含む約50の放送局が、毎年1億5000万人以上が視聴するこのコンテストの将来について協議するため、4日にEBUの会合に出席した。

会合では、イスラエルが今年のコンテストで自国の出場者ユヴァル・ラファエル氏を不当に後押ししたとの疑惑を受け、政府や第三者が投票キャンペーンを組織することを抑止する、新ルールへの支持が求められた。

BBCニュースの取材では、この新ルールを承認する投票は、イスラエルの参加について採決を行わないとする条項と結び付けられていたことが分かっている。

EBUは、「この投票によって、ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2026に参加を希望し、新ルールの順守に同意するすべてのEBU加盟局が出場資格を得る」と述べた。

大会ディレクターのマーティン・グリーン氏は、投票前にイスラエルのコンテスト参加について「議論する機会が与えられたことをうれしく思う」と述べた。

「議論は完全で率直かつ誠実で、かなり感動的なものだった。しかし、圧倒的な結果からも分かるように、加盟局はユーロヴィジョン・ソング・コンテストを政治の舞台として利用すべきではなく、一定の中立性を維持すべきだという信念で一致した」と語った。

イスラエルのアイザック・ヘルツォグ大統領は、同国の出場を認める決定を称賛し、「イスラエルを黙らせ、憎悪を広めようとする者たちに対する勝利を象徴する、連帯、友愛、協力のありがたい仕草だ」と述べた。

さらに「イスラエルが再びユーロヴィジョンに参加できることをうれしく思う。コンテストが文化、詩、そして国境を越えた文化理解と人々の友情を尊ぶ場であり続けることを願う」と語った。

「イスラエルは世界のあらゆる舞台で代表されるに値する。私はそのために全面的かつ積極的に取り組む」

イスラエルの公共放送KANのゴラン・ヨフパズ最高経営責任者は、自国の出場資格を失わせようとする試みについて「文化的なボイコットとしか理解できない」と述べた。

「ボイコットは今日イスラエルから始まるかもしれない。しかし、それがどこで終わるのか、誰に害を及ぼすのかは誰にも分からない」

また、「このコンテストが70周年に際して記憶されるものが本当にこれでいいのか」と問いかけた。

イギリスでユーロヴィジョンを放送するBBCは声明で、「我々はEBU加盟局による集団的な決定を支持する。これはEBUのルールを順守し、包括性を保つためのものだ」と述べた。

北欧諸国やドイツは新ルールを支持

しかし、この決定によって、ユーヴィジョン関係者の間に走る深い亀裂があらわになった。

オランダの放送局アブロトロスは声明で、「現在の状況下での参加は、我々にとって不可欠な公共の価値観と両立しない」と述べた。

スペインのRTVEは、「RTVEの取締役会は昨年9月、イスラエルが参加する場合、スペインはユーロヴィジョンから撤退することで合意している」と説明。「この撤退は、RTVEがユーロヴィジョン2026の決勝戦や予選の準決勝を放送しないことも意味する」と述べた。

スロヴェニアの公共放送RTVも、「我々の立場は変わらない」と強調した。

「最近のルール変更は、我々の見解を変えるものではない。公共放送として、RTVスロヴェニアは倫理原則の維持に努めており、すべてのEBU加盟局と参加国に、平等なルールと基準が適用されることを期待している」

このほか、ベルギーの放送局も、「今後数日で立場を決定する」としている。

一方、ルールの変更は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランドの北欧5カ国が支持した。各国の放送局は共同声明で、「投票制度の重大な欠陥に対処するというEBUの決定を支持する」と述べた。

そのうえでアイスランドの放送局RÚVは、ユーロヴィジョンへの参加に関する最終決定を、来週まで行わないとした。

イスラエルが排除された場合にはコンテストから離脱すると警告していたドイツも、EBUの決定を歓迎した。

ドイツの放送局ARDは「文化の多様性と連帯を祝う場として、来年の参加を楽しみにしている」と述べた。

さらに、「同時に、ESC2026から撤退するという個々のEBU加盟局の決定を深く遺憾に思うが、もちろん各放送局の選択を尊重する」と付け加えた。

ロシアはウクライナ侵攻を理由に、2022年から出場を拒否されている。

(英語記事 Ireland among countries boycotting Eurovision after Israel allowed to compete

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cqlk0516xv2o


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