自国経済のデフレを克服し、国内消費への構造的障壁を取り除き、為替レートの上昇を許し、産業に向けた数十億ドル規模の補助金や融資をやめることだ。しかし、中国の次の5カ年計画の中央委員会勧告を見れば、変化は期待できない。確かに「消費」は優先リストの3番目にあるが、1番と2番は「製造業」と「技術」だ。
そうなると、欧州に残されるのは一つの困難な解決策と一つの悪い解決策だ。困難な解決策とは、競争力を高め、新たな価値の源泉を見つけることだ。改革を進め、福祉を削り、規制を削減することが必要になる。しかし、それは、中国があらゆるものを安価に輸出し、輸入には関心を持たない世界では十分ではない。
結局、国内需要に頼らざるを得なくなる。悪い解決策とは保護主義だ。特に欧州は、産業を保持しようとすれば大規模な保護に向かわざるを得ない。これは有害で危険な道だ。
中国は、他の国が貿易障壁を築けば攻撃的に報復するだろう。それでは世界貿易体制は崩壊する。
良い選択肢がなくなれば、残るのは悪い選択肢だ。中国は貿易を不可能にしている。もし外国からは資源や消費財以外に何も買わないのであれば、他国も同じ準備をするしかない。
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米国にも責任の一端
興味深い問題提起である。ハーディングは、今の中国は、輸出はどんどんやり、輸入については「海外から買うものがない」と言い、同時に国内であらゆる製造業を築こうとしていると指摘し、それでは「貿易は成り立たない」と言う。
そして、①解決は中国が国内消費を拡大し、補助金や為替操作をやめることだ、➁欧州にとって残る解決策は、競争力を高め価値創造を目指す困難な道か、保護主義という悪い道だ、③中国が輸入を拒む限り、他国も自国需要や保護策に頼らざるを得なくなると言う。
ハーディングの指摘とその意味合いは、彼の言う通りだと思う。他方、責任の多くは中国にあるが、その一端は米国にもある。
近年の米国の姿勢、特にトランプ第二期政権の対中経済政策が、中国の政策をもたらしている面もある。米国の貿易、経済政策は益々混乱している。このままだと、世界経済は縮小していく。米中は良く考えるべきだ。
日本経済の台頭に伴って1970~80年代は主要7カ国(G7)でマクロ政策調整が行われた。1970年代後半には、需要維持のための日独機関車論が言われた。
