アメリカのトランプ政権は国境管理を厳しくしている(資料写真)
アメリカへの観光客は入国の条件として、ソーシャルメディアの過去5年間の利用情報を提出するよう求められる可能性が出てきた。イギリスや日本を含む数十カ国からの人々が対象になる。米当局が10日、こうした措置を提案していると、明らかにした。
この新たな条件は、これまでアメリカの電子渡航認証システム(ESTA)を使ってビザ(査証)なしで最長90日間、同国に滞在することができてきた人々に影響を及ぼす。
現行のESTAは、イギリス、アイルランド、フランス、オーストラリア、日本など約40カ国の人々が利用できる。申請者は、比較的限られた個人情報と40ドル(約6200円)を出し、2年間複数回有効の渡航認証を得る。
今回の提案は、「ESTA申請者に過去5年間のソーシャルメディアの提出を要求する」としている。具体的にどのような情報を求めるのかは明らかにしていない。
ソーシャルメディアの情報以外にも、過去5年間の電話番号や10年間の電子メールアドレス、家族に関する情報を集める方針も打ち出している。
ドナルド・トランプ大統領は、1月にホワイトハウスに戻って以来、国家安全保障を理由に、アメリカの国境をより厳しく管理する方向で動いている。
アナリストらは今回の新たな計画について、訪米しようとする人にとって妨げとなったり、そうした人たちのデジタル権を侵害したりする可能性があると指摘している。
トランプ氏は10日、この提案によってアメリカへの観光客が激減する可能性はないかと記者団から問われると、「ない。私たちはとてもうまくやっている」と答えた。
そして、「私たちはただ、人々にここに来てもらい、安全に過ごしてほしいだけだ。安全が欲しい。安心が欲しい」、「間違った人々を入国させないようにしたい」と述べた。
アメリカは来年、サッカー男子のワールドカップをカナダ、メキシコと共催することから、外国人観光客が大幅に増えると見込んでいる。2028年にはロサンゼルスでオリンピックを開催する。
今回の提案は、国土安全保障省(DHS)と、その下部機関の税関・国境警備局(CBP)がしたもので、連邦官報に掲載された。
提案では、トランプ氏が1月に出した「外国人テロリストおよびその他の国家安全保障と公共の安全の脅威から米国を守る」と題した大統領令が引用されている。
今後60日間、一般からの意見を募集する。
CBPの広報担当は、「アメリカに来る人々にとって、この点では何の変更もない」、「これは最終的なルールではなく、米国民の安全を守るための新たな政策オプションを持つための議論の出発点に過ぎない」とする声明を出した。
デジタル権の問題に取り組む「電子フロンティア財団」のソフィア・コープ氏は、今回の提案について、「市民的自由への害を悪化させる」恐れがあると、米紙ニューヨーク・タイムズの取材で批判した。
一方、移民法専門の法律事務所「フラゴメン」は、申請者がESTAの承認を待つ時間が長くなる可能性があるとし、実際的な影響が出る可能性を示唆した。
トランプ政権はすでに、学生ビザや熟練労働者向けのH-1Bビザの申請の審査に関して、ソーシャルメディアのアカウントを調べると発表している。
また、米当局は国境管理の厳格化の一環として、アフリカ、中東、カリブ海諸国の計19カ国を対象としている既存の渡航禁止措置が、まもなく拡大される可能性があるとしている。
トランプ政権になってからの観光政策の変更をめぐっては、専門家らから、アメリカの観光産業に影響が出ているとの指摘が出ている。
「世界旅行ツーリズム協議会」は、分析した184の経済圏の中でアメリカだけが、外国からの旅行者の支出が今年減少すると予想している。
トランプ政権の他の政策も観光に影響を与えているとみられる。例えば、関税政策への抗議として、多くのカナダ人が米国旅行をやめている。
(英語記事 US could ask foreign tourists for five-year social media history before entry)
