ルビオの狙い
ウクライナとロシアの和平交渉において、トランプ政権内の億万長者たちがビジネス取引を模索する中で、ウクライナの「安全の保証」を強調するのが、マルコ・ルビオ国務長官である。ルビオは12月2日、保守系のFOXニュースとのインタビューの中で、ウクライナの経済復興と繁栄に言及し、「10年後、ウクライナのGDPはロシアよりも大きくなる可能性がある」と述べ、ウィトコフとクシュナーを牽制したともとれるメッセージを送った。
ルビオは、キューバのバティスタ独裁政権から南部フロリダ州マイアミに逃れた移民の両親を持つ。現在、54歳のルビオは、バーテンダーの父親とホテルの清掃人の母親の下で育った。
地元のフロリダ大学からマイアミ大学ロースクールに進み、卒業後、政界を目指し、1999年同州の下院議員選挙および2010年連邦上院議員選挙に勝利し、順調に歩みを進めた。その後、保守派の市民運動「ティーパーティー(Tea Party)」を代表するリーダーの一人になり、全米的な知名度を得た。
2016年米大統領選挙に出馬したルビオは、共和党予備選挙で同党のエスタブリッシュメントから支持を得た。しかし、トランプから「リトル・マルコ」とレッテルを貼られ、テレビ討論会で揶揄されて、嘲笑の的になった。これに対し、ルビオはトランプを「大統領職を熱望する最も低俗な人間」と呼んで反撃を試みたが及ばず、選挙戦から撤退を余儀なくされた。
その後、ルビオはトランプの「指輪にキスをする(Kiss the ring)」行為に出たのか、権力者トランプに服従や忠誠を示している。その結果、ルビオは、2025年1月に発足した第2次トランプ政権で国務長官に就任し、同年4月からは大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も兼務している。
上記の経歴を持つルビオは、ウィトコフやクシュナーとは異なり、キャリア、即ち、次のステップ――大統領職を視野に入れている。
ルビオは、13歳年下のJ・D・バンス副大統領が次の米大統領選挙に出馬した場合、自分は出馬しないと語ったことがあるが、いずれにせよ、大統領になるという決意を抱いているに間違いない。
共和党系の世論調査会社ラスムセン・レポートの共和党支持者を対象にした全国世論調査(2025年11月18~25日実施)によれば、「もし今日、2028年共和党予備選挙が行われた場合、どの候補に投票するか」という質問に対して、62%がバンス、10%がルビオとロン・デサンティスフロリダ州知事と回答した。支持率でバンスに大きく溝を開けられているルビオだが、仮にルビオが大統領選挙に出馬したら、ウクライナの民主主義と自由主義のためにロシアと和平交渉を行ったと主張し、和平合意を自分の政治的功績にするだろう。
故に、ルビオは、ウィトコフやクシュナーのように戦争を金儲けのために利用して、莫大な富を得たと非難されることは何としても避けたい。また、和平交渉において、有権者からロシア寄りであったと思われるのも、ルビオには大きなマイナス要因になり得る。
英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(2025年11月28~12月1日実施)では、「ロシアとウクライナの取引において、トランプ大統領は、どちらをより支持する傾向があるか」という質問に、42%が「ロシア」、12%が「ウクライナ」、22%が「同等」、23%が「分からない」と答えた。ルビオなら、有権者からウクライナないし同等とみられたいところだろう。
