2025年12月22日(月)

BBC News

2025年12月22日

イスラエルのスモトリッチ財務相。自らも入植者で、今回の承認を提案した

シャイマ・ハリル(エルサレム)、マロリー・メンシュ

イスラエルの安全保障閣僚会議は、同国が占領するパレスチナ・ヨルダン川西岸地区の新たな入植地19カ所を承認した。ベザレル・スモトリッチ財務相が21日、明らかにした。イスラエル政府は入植地の拡大方針を継続している。

極右のスモトリッチ氏は、この決定はパレスチナ国家の樹立を阻止するためのものだと述べた。同氏自身も入植者で、イスラエル・カッツ国防相と共に今回の案を提案した。

ヨルダン川西岸のイスラエル入植地は国際法上、違法とされている。

サウジアラビアはこうした動きを非難している。国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、イスラエルの「とどまることのない」入植地拡大は、緊張をあおり、パレスチナ人の土地への移動を制限し、パレスチナが主権国家として存在する可能性を脅かすとしている。

ヨルダン川西岸では、2023年10月にガザ地区で戦争が始まって以来、暴力が急増している。それにより、入植地拡大がイスラエルの占領を強化し、2国家解決を損なうのではないかとの懸念がいちだんと高まっている。

2国家解決とは、ヨルダン川西岸とガザにパレスチナ国家を建設する構想で、首都を東エルサレムとし、イスラエルとの境界は1967年の第3次中東戦争以前の境界線にほぼ沿ったものとする。

イスラエルの現政権は2022年の発足以来、新たな入植地の承認を大幅に増やし、無認可の前哨基地を既存入植地の「近隣地域」として合法化する手続きを進めている。

スモトリッチ氏によると、今回の決定で、過去3年間に承認した入植地は計69件となった。

イスラエルの入植地拡大については、2017年以来となるレベルに達したと、国連が発表したばかり。

今回の承認には、約20年前に解体されたガニムおよびカディムの入植地2カ所の再確立も含まれている。

西岸地区併合の懸念も

イスラエルは今年5月、ヨルダン川西岸で22カ所の入植地を承認した。過去数十年で最大規模の拡大だった。

イスラエル政府は8月にも、エルサレムとマアレ・アドゥミム入植地の間に3000戸以上の住宅を建設する「E1計画」を承認している。この計画は、国際社会の強い反対を受けて長年凍結されていた。

スモトリッチ氏は同計画の推進を発表した際、この計画について、「パレスチナ国家という考えを葬る」ものだと述べた

入植に反対するイスラエルの団体「ピース・ナウ」によると、ヨルダン川西岸と東エルサレムには入植地が160カ所近くあり、計約70万人が住んでいる。それらの土地は、パレスチナ人が将来の独立国家の土地だとして求めている。

アラブ諸国は入植地の拡大に対し、2国家解決への展望を損なうとして、一貫して激しく反発している。

入植地拡大はまた、イスラエルがヨルダン川西岸を併合する可能性への懸念も生んでいる。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イスラエルのそうした動きに警告を発している。もしヨルダン川西岸を併合すれば、イスラエルはアメリカからのすべての支援を失うだろうと、米誌タイムに話している。

イギリスやオーストラリア、カナダなどの国々は9月、パレスチナ国家を承認した。各国政府にとっては、象徴的ではあるものの大きな意味をもつ政策変更となった。

イスラエルはこの動きに反発。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、パレスチナ国家は「実現しない」としている。

(英語記事 Israel approves 19 new settlements in occupied West Bank

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cd9zwden714o


新着記事

»もっと見る