オズモンド・チア・ビジネス記者
米アマゾンの最高幹部はこのほど、同社の求人に対する応募の中から、北朝鮮の工作員によると疑われる1800件以上をブロックしたと明らかにした。
アマゾンのスティーヴン・シュミット最高セキュリティー責任者は先週、北朝鮮の人々が、盗んだり偽造したりした身分証明を使ってリモートワークのIT関連の仕事に応募しようとしたと、ソーシャルメディアのリンクトインに投稿した。
シュミット氏は、「それらの人々の目的は通常、単純だ。雇われ、給料をもらい、その賃金を政権の兵器プログラムの資金に充てることだ」と説明。こうした現象は、IT業界全体でみられる可能性が高いとし、特にアメリカで顕著だとした。
アメリカと韓国の当局は、北朝鮮の工作員によるオンライン詐欺に気をつけるよう警告している。
休眠アカウントを乗っ取り
シュミット氏の投稿によると、アマゾンの求人への北朝鮮からの応募は、この1年で3割近く増えた。
同国の工作員らは通常、「ラップトップ・ファーム」(アメリカをベースとするが、同国の外から遠隔操作されているコンピューター)を管理する人々と共に活動しているという。
アマゾンでは、人工知能(AI)ツールと従業員による検証を組み合わせて、求人への応募書類を審査している。ただ、だまそうとする側の戦略も、より巧妙になっているという。
不正をはたらく人々は、流出した認証情報を使って、リンクトインの休眠アカウントを乗っ取っているという。信用できる人物だと見せかけるため、ソフトウエアのエンジニアのアカウントを狙っているという。
シュミット氏は、不審な応募については当局に報告すべきだと各企業に促している。また、形式が正しくない電話番号や学歴の矛盾など、北朝鮮による不正応募の特徴に目を光らせるよう、雇用主に対策を呼びかけている。
アメリカ政府は6月、国内各地で北朝鮮のIT労働者によって違法に運営されていたラップトップ・ファームを29カ所摘発したと発表した。
米司法省によると、北朝鮮の労働者らは、盗んだり偽造したりしたアメリカ人の身分証明を使い、北朝鮮国籍の人々がアメリカで仕事を得るのを支援していたとされる。
同省は、北朝鮮工作員が仕事に就くのを手助けをしたアメリカのブローカーらも起訴したという。
7月にはアリゾナ州の女性が、ラップトップ・ファームを運営した罪で8年以上の禁錮刑を言い渡された。このファームでは、北朝鮮のIT労働者らがアメリカ企業300社以上で、リモートの仕事に就くのを支援していたという。
司法省は、こうした活動によって、女性と北朝鮮は1700万ドル(約26億5000万円)の利益を不正にあげていたとした。
(英語記事 Amazon blocks 1,800 job applications from suspected North Korean agents)
