2025年12月23日(火)

BBC News

2025年12月23日

避難民となったパレスチナ人女性が、国際移住機関(IMO)のテントの近くで料理をしている(18日、ハンユニス)

イスラエルが今年3月に導入した国際非政府組織(INGO)に対する登録制度について、国連や国際援助援助機関が、イスラエル占領下のパレスチナ・ヨルダン川西岸とガザ地区で人道支援の崩壊を招く恐れがあると懸念を表明している。

新たな制度では、12月31日までに登録されないINGOは、イスラエル国内での活動を60日以内に停止することになる。援助機関は、これがガザでの医療や命を守るサービスを深刻に混乱させる可能性があると指摘している。

国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」は、申請が承認されなかったと明らかにしたうえで、「この決定を再考させるために利用可能なすべての手段を追求している」と述べた。

これに対し、イスラエルのディアスポラ問題・反ユダヤ主義対策省は、「ならず者組織」の撤退は援助提供に影響を与えないと説明した。

同省によると、約100件の申請のうち、これまでに14件が却下された。一方、21件が承認され、残りは審査中だ。

登録制度には、却下の理由として以下が示されている

・ユダヤ人国家かつ民主主義国家としてのイスラエルの存在を否定すること

・ホロコーストや、2023年10月7日のハマス主導によるイスラエルへの攻撃を否定すること

・敵対国やテロ組織によるイスラエルへの武装闘争を支持すること

・イスラエルに対する「正当性否認キャンペーン」を推進すること

・イスラエルのボイコットを呼びかける、またはそれに参加することを約束すること

・イスラエル治安部隊に対する外国または国際法廷での訴追を支持すること

ガザの医療施設の3分の1が閉鎖される可能性

国連機関と200以上の国内外の組織を束ねる「パレスチナ占領地人道カントリー・チーム」は17日の声明で、この制度がガザとヨルダン川西岸におけるINGOの活動を「根本的に危険にさらしている」と警告した。

「この制度は、あいまいで恣意(しい)的かつ高度に政治化された基準に依拠し、人道組織が国際法上の義務に違反することなく、または基本的人道原則を損なうことなく満たすことができない要件を課している」

また、「一部のINGOは新制度の下で登録されているが、これらのINGOはガザでの活動のごく一部に過ぎず、即時かつ基本的なニーズを満たすために必要な数には到底及ばない」としている。

同団体によると、INGOは現在、ガザの野戦病院や初期医療センターの大半、緊急シェルターでの対応、水と衛生サービス、急性栄養不良の子どもを対象とした栄養安定センター、そして重要な地雷対策活動を運営・支援している。

これらのINGOが活動を停止せざるを得なくなった場合、ガザの医療施設の3分の1が閉鎖されると、同団体は指摘した。

「この政策を推し進めれば、OPT(占領下パレスチナ地域)の将来に広範な影響を及ぼすだけでなく、脆弱(ぜいじゃく)な停戦を脅かし、特に冬季に、パレスチナ人の命を差し迫った危険にさらすことになる」

「INGOの登録が解除され、その活動が崩壊した場合、国連はそれを補えない。また人道対応は、確立された人道原則の外で活動する代替主体によって置き換えることはできない」

そのうえで同団体は、イスラエルには国際人道法にのっとり、ガザの住民に十分な供給を確保する義務があると強調した。

「セーブ・ザ・チルドレン」は22日、数週間前に登録申請が承認されなかったと通知を受けたことを認めた。同団体はガザで、清潔な水や現金支援、医療クリニック、母子エリアを提供してきた。

同団体の広報担当者はBBCに対し、「この決定を再考させるため、イスラエルの裁判所への申し立てを含め、利用可能なすべての手段を追求している」と述べた。

「この決定の再考を求める一方で、300人以上の献身的なパレスチナ人スタッフと信頼できるパートナーと共に、占領下パレスチナ地域の子どもと家族に重要で命を守る支援を提供し続けることに尽力している」

国境なき医師団(MSF)も、依然として登録取得を待っていると明らかにした。MSFはガザで公立病院6カ所を支援しているほか、2か所の野戦病院を運営し、過去1年間で数十万人の患者を治療してきた。

MSFは声明で、「ガザの医療体制がすでに崩壊している中、独立した経験豊富な人道組織が対応のためのアクセスを失うことは、パレスチナ人にとって災害になる」と述べた。

「MSFはイスラエル当局に対し、INGOがガザで確実に、公平かつ独立した対応を維持・継続できるようにするよう求める。すでに制限されている人道対応を、これ以上解体することはできない」

イスラエルの主張は

イスラエルのディアスポラ問題・反ユダヤ主義対策省の報道官はBBCに対し、登録期限を9月9日から12月31日まで「必要を大きく超えた特別措置として」延長したと述べた。

「行動するには十分すぎる時間があった。今になっても対応を怠った組織は、明らかに誠意を欠いていることを示している」と、報道官は述べた。

また、手続きはすべての関連するイスラエルの治安機関と政府機関を含むチームによって実施され、「一律の拒否や大量の却下という主張は、虚偽で誤解を招くものだ」と強調した。

そのうえで、「人道支援は途切れることなく続く。人道を装ってイスラエル国家を弱体化させることを真の目的とするならず者組織の撤退は、援助の継続的な提供に影響を与えない」と付け加えた。

(英語記事 NGOs fear Israel registration rules risk collapse of Gaza aid operations

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0edj20nwp0o


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