2025年12月29日(月)

BBC News

2025年12月29日

タイとカンボジアは27日、国境地帯での軍事衝突をめぐり、停戦に合意した。停戦は同日正午に発効した。今月上旬から約3週間続いた衝突では、複数の死傷者が出たほか、100万人近くが家を追われた。

タイとカンボジアは共同声明で、現在の前線に沿って紛争を停止し、増援を禁止し、国境地域で暮らす民間人ができるだけ早期に帰還できるようにすることで合意したと発表した。

声明によると、停戦が27日正午から72時間維持されれば、7月からタイに拘束されているカンボジア兵18人が解放されるという。

今回の進展は、両国の数日間にわたりる協議と、中国とアメリカの外交的後押しを受けて実現した。

合意には、避難民の帰還を優先することや、地雷除去についても盛り込まれている。

タイのナタポン・ナルクパニット国防相は今回の停戦について、「相手側の誠意を試すもの」だと述べた。

「停戦が実現しなかったり、破られたりした場合、タイは国際法の下での正当な自衛権を留保している」と、ナルクパニット国防相は記者団に語った。

国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は、この停戦が平和への「道を開く」ことを期待すると述べた。一方で欧州連合(EU)の報道官は、停戦の「誠実な」履行を求めた。

タイは、前回の合意が適切に履行されなかったとして、これまで停戦に消極的だった。また、今回の紛争をカンボジアが国際問題化しようとしているとして、不満を抱いていた。

7月の衝突を受けた前回の停戦合意は、マレーシアが仲介し、10月にドナルド・トランプ米大統領のもとで両国が署名した。

今回はトランプ氏の姿はなかったが、交渉には米国務省も関わっていた。

前回の停戦合意は、今月上旬に新たな衝突が起きたことで破綻した。タイとカンボジアは相手側が合意に違反したと、互いに非難した。

タイ軍は7日、北東部シーサケート県で、カンボジア軍との35分間の武装衝突があったと報告。その後、シーサケート県と、国境沿いのブリラム、スリン、ウボンラーチャターニー3県に避難命令を出した。タイ側は、カンボジア軍の攻撃により兵士1人が死亡し、8人が負傷したと発表した。

一方、カンボジア国防省は、同国北部プレアヴィヒア州とオッドーミアンチェイ州の国境沿いで、タイ軍から先に攻撃されたが、反撃はしなかったと主張した。

それ以降、両国の衝突は12月下旬まで続き、26日にはタイがカンボジア領内を新たに空爆した。

タイ空軍は、民間人が避難した後にカンボジアの「要塞(ようさい)化された軍事拠点」を攻撃したと説明した。これに対しカンボジア国防省は、民家への「無差別攻撃」だと反論した。

今回の停戦がどれだけ維持されるかは、政治的意志に大きく左右される。両国では国家主義的な感情が高まっている。

特にカンボジアは、多くの兵士と軍装備を失っている。国境沿いで維持していた陣地からの撤退を余儀なくされ、タイの空爆で甚大な被害も受けている。こうした不満から、恒久的な和平実現がより難しくなる可能性がある。

タイとカンボジアの係争は100年以上前、フランスによるカンボジアの植民地支配後に、両国の国境が画定された時期にさかのぼる。

両国の関係が正式に敵対的になったのは2008年で、カンボジアが係争地にある11世紀の寺院を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録しようとしたことが発端だった。この動きに対し、タイ側は激しく抗議した。

今年初めには、カンボジア人女性の集団が、係争中の寺院で愛国歌を歌ったことで緊張が高まった。

5月の衝突ではでカンボジア兵1人が死亡。2か月後には、国境地帯で激しい衝突が5日間続き、数十人の兵士と民間人が死亡した。また、数千人の民間人が家を追われた。

マレーシアとトランプ米大統領の仲介で、10月末にタイとカンボジアが署名した共同声明を、トランプ氏は「クアラルンプール和平協定」と呼んだ。この合意は両国に対し、係争中の国境地域から重火器を撤収し、一帯に暫定的な監視団を設置することを義務付けていた。

しかし、タイは11月、共同宣言の履行停止を発表。シーサケート県のカンボジア国境付近で地雷が爆発し、兵士2人が負傷したことを受けた対応だった。タイのアヌティン・チャーンウィラクン首相は当時、国防当局の決定に同意するとし、「安全保障上の脅威は(中略)実際には弱まっていない」と述べた。

(英語記事 Thailand-Cambodia ceasefire begins after weeks of deadly clashes

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/clyzyngjvxlo


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